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辺境伯令嬢は内政チートで世界を変える ~そして聖女は大陸を笑顔で包み込む~  作者: 赤井咏紗
第二部 聖女レティシアと世界樹の試練
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第二部・第九話(第34話) 世界樹の再生――にぱぁスマイルの奇跡

 精霊との対話を経て、私は「聖女」としての資格を認められた。

 だが、それを許さぬ存在がいた。


 「小娘が……! 世界樹の加護を受けたとて、我が呪いを払えるものか!」

 魔導卿ヴェルゼンが黒い瘴気を迸らせ、世界樹を包み込む。


 幹は悲鳴をあげるように軋み、枝葉は黒く枯れていった。

 エルフたちは絶望に沈み、長老会すら膝をつく。


 ――来たな。これが、最後の試練。





 そのとき、森の各所から声が響いた。


 「任せろ!」剣士カイルの剣が影を両断し、

 「炎で浄化する!」魔術師ロイが呪いを焼き払い、

 「私が導く!」王子クラウスが兵を指揮し、

 「資源は俺が確保する!」商人ユリウスが物資を運び、

 「矢は外さない!」エルヴィンの矢が瘴気の核を撃ち抜く。


 彼らは声を揃えた。

 「行け、レティシア!」


 胸が熱くなる。

 ――俺は、一人じゃない。





 私は世界樹の前に立ち、両手を広げた。

 「私は奇跡を起こせない。ただの人間です。

  でも、私には――信じてくれる仲間がいる!」


 その瞬間、精霊の光が私の体を包み、心臓が熱く震えた。


 「世界樹よ、応えてください! 私たちは生きたい、未来を繋ぎたいのです!」


 ――それでも、呪いは消えなかった。

 黒い瘴気が最後の力を振り絞り、私を覆い尽くそうと迫る。





 絶望の刃が胸に迫る。

 その瞬間、私は――笑った。


 「にぱぁぁぁぁぁぁ!!!」


 全力の笑顔。

 必死で、必死で、泣きそうになりながら笑った。


 光が溢れ、瘴気が砕け散る。

 精霊たちが歓喜の声を上げ、世界樹の幹に鮮やかな緑が戻っていく。


 ヴェルゼンが絶叫する。

 「なぜだ……! 笑顔ごときに、我が呪いが……!」


 私は静かに答えた。

 「笑顔は、人を信じる心の証です。

  あなたには、それがなかった」




 光は大森林全体に広がり、黒く枯れていた木々は一斉に芽吹いた。

 鳥たちが歌い、風が優しく吹き抜ける。


 世界樹は再び息を吹き返し、その枝葉を天へと広げていた。


 ――俺たちは、やり遂げたんだ。





 村人たちは歓声を上げ、長老たちも涙ながらに頭を垂れた。

 「聖女レティシア……あなたこそ、真に我らの導き手」


 私は首を横に振った。

 「私は聖女ではなく、ただの人間です。

  でも、この命の限り、精一杯生きて……世界を守りたい」


 その言葉に、エルヴィンが微笑みを浮かべた。

 「ならば、俺も弓を捧げよう。あなたと共に未来を紡ぐために」


 ――俺はもう、前世に縋らない。

 この世界で、「私」として生きていく。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

良ければ感想をレビューに書いてください。投稿の励みになります。



次回予告


第二部・第十話(第35話)

「新たな風――聖女とエルフの盟約」


世界樹再生を果たしたレティシア。だがそれは、王国とエルフ族との新たな政治交渉の幕開けでもあった。

聖女としての立場を巡り、政争の風はさらに広がっていく――。

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