第二部・第二話(第27話) 「エルフの青年と森の異変」
大森林は圧倒的な緑の海だった。
木々は天を突くほど高く、空はほとんど見えない。
その中で俺を待っていたのは、長い銀髪と翠の瞳を持つ青年。
透き通るような肌、しなやかな肢体――まさに絵に描いたようなエルフ。
「……人間の娘か。聖女と呼ばれる者だな?」
彼は弓を背負い、静かに名乗った。
「我はエルヴィン。東の大森林を守護する氏族の戦士だ」
だが、彼の声は冷ややかだった。
「人間に世界樹は救えぬ。我らエルフですら手を焼いているのだ」
エルフ族は長命で誇り高い。
人間を信用していないのは仕方ない。
「……それでも、俺は来た。世界樹を救わなきゃ、王国も滅ぶ」
にぱぁスマイルで切り返したい衝動を必死に抑えつつ、俺は真剣に言った。
エルヴィンは一瞬だけ目を見開き、やがて小さく息を吐いた。
「……ならば見極めさせてもらおう。聖女と呼ばれる者の力を」
森の奥へ進むと、異様な光景が広がっていた。
枯れた木々、黒く濁った川、弱り果てた精霊たち。
世界樹の力が失われつつあるのは明らかだった。
「原因は不明だが、森の奥で“何か”が動いている」
エルヴィンの瞳が険しくなる。
――これは単なる自然現象じゃない。
誰かの意志が、森を蝕んでいる。




