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第二十三話 商人ユリウスの戦い――欺瞞を砕く取引
ユリウスに立ちはだかったのは、王都最大の商会。
「辺境ごときが我らに勝てるものか」
金と金のぶつかり合い。
だがユリウスは静かに微笑んだ。
「勝つために取引するのではない。生かすために取引するのだ」
彼は巧みに契約を結び、裏帳簿を突きつけ、腐敗した取引を暴く。
「金で買えるのは物だけだ。だが、信義は買えない」
商人たちは狼狽し、やがてユリウスの前にひざまずいた。
ユリウスは独り、夜の帳簿を閉じながら呟いた。
「俺は金で人を救う。彼女が示した理を、商人として広げるために」




