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第二十話 剣士カイルの戦い――守る刃の意味
深夜の回廊に立つ影。
「……久しいな、カイル」
それはかつて彼に剣を教えた師、だが今は黒幕の手先となった男だった。
「師匠……なぜ」
「剣は己のために振るうものだ。お前は愚かだ、女に仕えるなど」
カイルは静かに剣を抜いた。
「違う。俺は己のために、この剣を振るう。守りたいと願った自分のために」
廊下に剣戟の火花が散る。
師の技は重く、鋭い。
だがカイルは一歩も退かず、全力で刃を受け止める。
「剣は力の象徴だ! 守るためなど偽善!」
「なら、この刃で証明してみせる!」
最後の一閃。
カイルの剣が師の刃を打ち砕いた。
倒れた師に、カイルは剣を収めて言った。
「俺は誰かのために剣を振るう。それは偽善じゃない。
それが――俺自身の生き方だ」
静かに去る背を、誰も知らない。
翌朝も彼は何事もなかったようにレティシアの護衛に立っていた。




