第十九話 偽りの証拠――逆転の反撃へ
俺は王都の宮廷で孤立していた。
「帳簿改竄の犯人」として、廷臣たちの冷たい視線が注がれる。
だが、諦めるわけにはいかない。
「必ず、この罠を暴く」
そう決意したとき、背後から声が届いた。
「……俺に任せろ」剣士カイル。
「分析は私が」魔術師ロイ。
「王家の名で守ろう」王子クラウス。
「取引の裏を洗います」商人ユリウス。
――俺は一人じゃない。
カイルは夜の回廊を駆け抜け、俺を陥れた派閥の動きを追った。
兵士すら気づかぬ気配を感じ取り、彼は物陰に潜む密偵を捕らえる。
「帳簿をすり替えたのはお前か」
震える密偵は吐いた。
「……偽の帳簿は、南伯爵家の命で作られた」
カイルの剣が煌めき、証拠の文書が奪われる。
一方、ロイは魔術で帳簿を解析していた。
「このインク、王都ではなく南方の商人ギルドが流通させているものだ」
炎で炙り出された微細な文字。
そこには「改竄依頼」の署名が浮かび上がる。
「科学も魔術も、真実は隠せない」
ロイの声は冷たくも確信に満ちていた。
クラウスは議会に乗り込み、真っ直ぐに声を放った。
「神童令嬢を貶めることは、王国の未来を貶めることだ!」
王族としての威光、その瞳の強さ。
反対派の貴族たちは一歩退き、言葉を失った。
「父王は彼女に試練を与えた。ならば答えを聞くまでは、誰も彼女を裁けない!」
ユリウスは密かに王都の商会を回り、情報を集めていた。
「帳簿改竄に関わった商人は、伯爵家に金で雇われた――」
証拠の取引記録を掴み、裏切り者たちを一網打尽にする。
「数字は金より雄弁だ。……これで逃げ場はない」
そして、俺は全ての証拠を抱えて玉座の間に立った。
「帳簿の改竄は私ではありません。南伯爵家による陰謀です」
証拠の文書、インクの解析結果、商人の取引記録。
四人が持ち帰った証を次々と示す。
廷臣たちは騒然とし、王の瞳が鋭く光る。
「……真実は明らかだ。南伯爵家を拘束せよ!」
その瞬間、重くのしかかっていた疑惑は晴れた。
俺は安堵の息を吐き、仲間たちを振り返る。
剣で敵を退ける者。
魔術で真実を暴く者。
王族の威光で守る者。
経済の網で裏切りを潰す者。
――彼らがいたから、俺はここで戦えた。
心の奥が熱くなる。
「ありがとう……みんな」
次回予告
第二十話 宮廷の嵐――真の敵は誰だ
南伯爵家の失脚で一件落着……のはずが、新たな陰謀の影が宮廷を覆う。王国を揺るがす黒幕の存在が浮かび上がり、レティシアはさらなる政争の渦へ――。




