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辺境伯令嬢は内政チートで世界を変える ~そして聖女は大陸を笑顔で包み込む~  作者: 赤井咏紗
第一部 神童と呼ばれるおっさん
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第十八話 宮廷の罠――神童令嬢を貶める影

レティシアの快進撃に対する反発、派閥の陰謀、罠にかけられる緊張感

 王が承認した「三策」は速やかに実行へ移された。

 宮廷行事の削減により浪費は減り、軍事補助金の配分改革で不正は減少。

 農村基金が立ち上がり、農民たちの顔に笑顔が戻り始めた。


 王都の市井では人々が囁いた。

 「神童令嬢が王国を救った」

 「辺境から来た少女が未来を変える」


 だが、その称賛は同時に、権力者たちの苛立ちを募らせていった。





 ある夜会でのこと。

 華やかな音楽が流れる中、俺は貴族たちの冷たい視線に囲まれていた。


 「辺境の小娘が王に取り入っている」

 「第一王子派か、第二王子派か……どちらに肩入れしている?」

 「どちらにも与さずに力を得るなど許されぬ」


 甘い笑みを浮かべつつも、彼らの目は獲物を狙う猛禽のようだった。


 ――数字で示しても、感情の利害は消せない。

 俺はその現実を痛感していた。





 翌日、財務卿から王に報告が上がった。

 「辺境伯令嬢が提出した帳簿に不正の痕跡がございます」


 大広間がざわめく。

 俺は思わず息を呑んだ。

 帳簿に記された数字は、改竄されていた。


 「農村基金の資金が消えている」

 「補助金の流れが不透明だ」

 「結局は辺境伯家が私腹を肥やしているのでは?」


 廷臣たちの疑惑の目が一斉に俺に突き刺さる。




 玉座から王の声が響いた。

 「レティシア。これは真か?」


 重い沈黙。

 俺は深呼吸をして答えた。

 「偽りです。帳簿は改竄されています。証拠を示せます」


 だが、すかさず反対派の貴族が声を張り上げた。

 「証拠? この場にあるのは帳簿そのもの! お前の仕組みが腐敗を生んだのだ!」


 廷臣たちの怒号が飛び交い、王都の空気は一気に敵意に染まっていく。





 味方のはずの一部の貴族すら沈黙し、俺を助けようとはしなかった。

 派閥の思惑が絡み合う宮廷では、「利用価値がなくなった」と見なされた者は、容赦なく切り捨てられる。


 ――これが政争。

 数字だけでは救えない、人間の欲望と嫉妬の渦。


 俺は壇上に立ちながら、心の奥で強く握り拳を作った。

 「必ず、この罠を暴いてみせる……」





 その夜。

 薄暗い回廊の奥で、反対派の貴族たちが囁き合っていた。


 「神童令嬢など恐るるに足らぬ」

 「次は暗殺ではなく、証拠でもって葬るのだ」

 「辺境伯家もろとも、潰してしまえばよい」


 その笑い声を、偶然通りかかったカイルが耳にする。

 彼の表情は冷たく硬くなった。

 「……レティシア様が標的にされている」


 嵐はまだ始まったばかりだった。

次回予告


第十九話 偽りの証拠――逆転の反撃へ

罠にはめられ、疑惑の目を向けられたレティシア。だが彼女は諦めない。偽りの帳簿を暴き、真実を示すため、知略と仲間の力を駆使して反撃を開始する――!

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