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辺境伯令嬢は内政チートで世界を変える ~そして聖女は大陸を笑顔で包み込む~  作者: 赤井咏紗
第一部 神童と呼ばれるおっさん
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第十七話 神童令嬢の試練――王都財政を救え

数字と仕組みを武器に、宮廷の場でレティシアがどう戦うか

 三日間。

 王から与えられた期限は、まさに雷のように重くのしかかった。

 「王都の財政を立て直す策を示せ」


 剣も魔術も使えない俺に残された武器は――数字と仕組み。

 机に積まれた財務記録の山に向き合いながら、俺は前世で培ったコンサル魂を呼び覚ました。


 「……徹夜で財務分析なんて、転生してもやること変わんないな」




 王国の収支を徹底的に洗い出した結果、三つの問題が浮かび上がった。


無駄な宮廷支出

 舞踏会や儀礼行事のために、莫大な金が流れている。


軍事費の偏り

 一部の派閥領主の兵にだけ補助金が回され、他は放置。


農村支援の不足

 食糧生産を支える農村への投資が極端に少なく、飢饉リスクが高い。


 俺は羊皮紙にまとめながら、心の中で呟いた。

 ――これは、組織が腐った典型例だ。





 俺は大胆に書き出した。


 「第一に、宮廷行事の半減。王家の威信は失わず、浪費だけを削る」

 「第二に、軍事補助金を再編。兵の数ではなく成果に基づいて配分する」

 「第三に、農村支援基金を新設。長期的な収穫増で税収を安定させる」


 さらに、会計の透明性を高めるため「月次帳簿」の仕組みを導入する案を加えた。


 ――いわば、異世界版の予算改革+KPI管理システムだ。





 三日後。

 王の前に集められたのは、宰相、財務卿、両派閥の重鎮たち。

 空気は張り詰め、俺が一歩間違えれば笑い者にされ、辺境伯家の立場すら危うい。


 俺は深呼吸をして壇上に立ち、羊皮紙を広げた。


 「王都の財政は三年以内に破綻します。ですが、この三策を実行すれば、逆に黒字化も可能です」


 ざわめく廷臣たち。

 俺は怯まず、数字を叩きつけた。




 「宮廷行事費を五割削減すれば、年六百万金貨の余剰が生まれます。

  軍事費の成果配分を導入すれば、腐敗した兵は淘汰され、効率化でさらに五百万金貨が節約可能。

  農村支援基金を設立すれば、二年で収穫が一割増加し、税収で七百万金貨が追加されます」


 俺は最後に結論を突きつけた。

 「――三策を実行すれば、三年後には財政は二千万金貨の黒字に転じます」


 大広間が静まり返った。

 重臣たちは顔を見合わせ、誰もすぐには反論できない。





 沈黙を破ったのは王だった。

 「……数字で示された策。感情や派閥を超え、理にかなっている」


 王は厳しい眼差しを俺に向けた。

 「レティシア。そなたはただの“神童”ではない。王国を救う才覚を持つ者だ」


 玉座の間に重い声が響く。

 「よかろう。三策、直ちに実行せよ」


 廷臣たちから驚きと反発の声が上がったが、王の決断は覆らない。





 その夜。

 宿舎に戻った俺は机に突っ伏し、深いため息をついた。


 「……あれ、完全に前世のプレゼンだったよな」

 数字でまとめ、課題を列挙し、解決策を提示。

 資料がパワポじゃなく羊皮紙だっただけで、やってることは同じだ。


 それでも、胸は熱く高鳴っていた。

 「これで……俺の知識が、この国を動かす」

次回予告


第十八話 宮廷の罠――神童令嬢を貶める影

財政改革を受け入れられたレティシア。しかし快進撃は長くは続かない。王都の派閥は彼女を「脅威」と見なし、陰謀と罠で失脚を狙う――。

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