第七部・おまけ(第182話)ひやぁスマイル — 教義追加の日
やはり最強は、ひやぁスマイルだと思うの。
美人な方や可愛い人の、冷ややかな笑いって需要あるもんね。
辺境伯領での「皆の聖女宣言」から数日後。
城下では、にぱぁ協会の信者たちがまたぞろ集まっていた。
「“聖女は皆の聖女”! 新たな教義だ!」
「聖女様は結婚しない! 我らの永遠の聖女だ!」
「今日もにぱぁ三唱! にぱぁ! にぱぁ! にぱぁ!」
……いや、もう完全にお祭りどころか宗教国家一歩手前じゃない。
私は執務室からそれを眺め、こめかみを押さえた。
「……あのね、私は“皆の聖女”って言ったけど、あんたたちのアイドルやマスコットになったつもりはないのよ?」
広場では、信者たちが新しい横断幕を掲げていた。
『聖女様の笑顔で労働三倍! 生産力三倍! にぱぁ経済の勝利!』
「勝手に経済スローガンにするなぁぁぁ!」
別の信者は「聖女様の微笑に感謝するため、にぱぁ税を導入しましょう!」と叫んでいた。
「いや課税権ないでしょ!? 勝手に制度作るな!」
(……ほんとにもう、どこまで行くのよこの人たち)
私は壇上に上がり、民衆を見下ろした。
「……いい加減にしなさい」
にっこりでもなく、穏やかでもなく——
私は、頬だけわずかに吊り上げ、冷たく凍り付くような笑みを浮かべた。
「ひやぁぁぁぁぁぁっ……」
瞬間。
辺境伯領の空気が一気に凍り付き、笑い声も歓声もピタリと止まった。
誰もが背筋に氷柱を突き立てられたように硬直し、その場に正座する勢いで黙り込む。
(あ、効きすぎたかも)
翌日、にぱぁ協会の布告板には新しい文字が記されていた。
『聖女を怒らせるべからず』
『他人が嫌がることは、たとえ善意でも行はない』
「……いや、普通の常識を教義にするな」
私は呆れつつも、広場を眺めて小さく笑った。
(でも、これで少しは落ち着いてくれるかしらね)
すると、協会員たちが一斉に叫んだ。
「ありがたきお言葉! これぞ真理!」
「ひやぁスマイルこそ聖なる戒め!」
——やっぱり落ち着かない気がした。
私は両手で顔を覆い、ため息をついた。
「……ほんと、どうしてこうなったのよ」
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その準備に夢中で投稿を失敗してしまいすみません。。。
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