第十三話 王子クラウス――剣とカリスマを携えし者
カリスマとリーダーシップ、そして剣の腕前まで示す高スペックな王子の姿を描きますね。
春先、王都近郊の小領地で反乱が起きた。
「重税に耐えかねた農民と傭兵が蜂起、領主を追い出した」との急報に、王都は混乱。
しかし、対応を誤れば反乱は周辺諸侯へ波及し、王国全土を揺るがしかねない。
その場に自ら名乗りを上げたのが――第一王子クラウスだった。
「私が行こう。未来の王として、この乱を鎮める責務がある」
まだ若い王子。
だがその声音には、兵を率いる者の確かな力があった。
クラウスは百騎足らずの兵を率いて進軍した。
戦力だけ見れば反乱軍の三分の一にすぎない。
だが彼の一声で兵士たちは胸を張り、恐れを忘れたように行軍を続ける。
「恐れるな! 我らは王国の剣、そして民の盾だ!」
凛とした声が野に響き渡り、兵士の士気は一気に高まった。
その光景を見た俺は――認めざるを得なかった。
……これが“王になる男”のカリスマか。
反乱軍は城門前に布陣し、槍を構えて迎え撃つ。
通常なら数で圧倒される場面だ。
しかしクラウスは剣を抜き放ち、馬上から声を張り上げた。
「我に続け!」
王子自ら先陣を切り、真っ直ぐに突撃。
兵たちはそれに続き、細い槍衾を一気に崩した。
反乱兵が一人、王子に刃を振り下ろす。
だがクラウスは体を捻り、剣を閃かせて一撃で武器を弾き飛ばした。
その流れるような剣技に、敵兵も味方も一瞬見惚れた。
「退け! 命を捨てるな!」
王子の声に従い、反乱兵は次々と投降していく。
戦いの後。
クラウスは捕虜となった農民たちを前に立ち、剣を下げて言った。
「剣を捨て、家族のもとへ帰れ。罪は裁かれるが、命まで奪わせはしない」
涙を流す農民、安堵する兵士たち。
その姿はまさしく“未来の王”だった。
俺は遠くからその様子を見て、背筋が震えるのを感じた。
剣の技量、兵を導く力、そして人心を掌握するカリスマ。
……スペック高すぎだろ、こいつ。
帰還の夜。
クラウスは静かに俺の前に現れた。
「レティシア。今日の戦で、私は確信した。
――君こそ、共に国を導くにふさわしい存在だ」
真剣そのものの瞳。
俺は思わず視線を逸らした。
……だめだ、これ本気だ。
剣士カイルも魔術師ロイも十分すぎるほど高スペックなのに、王子クラウスまで本気とか、どうなってんだこの逆ハーレム。
次回予告
第十四話 商人ユリウス――富と策を握る者
剣も魔術もない、しかし経済という見えぬ刃を振るう男――若き商会後継者ユリウス。狡猾な商人ギルドの罠に挑み、辺境を守るためレティシアの前でその才覚を示す!




