第十一話 高潔なる剣士カイル――刃は守るために
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ある日の夕刻、領地の北端から急報が入った。
「森に魔物が出没! 村人たちが襲われている!」
俺は父に同行しようとしたが、父は首を振った。
「危険すぎる。屋敷に残れ」
だが、すでに一人の影が飛び出していた。
――剣士カイル。
村に駆けつけたカイルの前に立ち塞がったのは、巨体のオーガだった。
村人たちは怯え、悲鳴を上げて逃げ惑う。
「下がってろ!」
カイルは叫ぶや、一直線に駆け抜けた。
巨腕が振り下ろされ、地面が抉れる。
だが彼は紙一重でかわし、オーガの膝へ鋭く斬撃を叩き込んだ。
刃が閃き、血が飛ぶ。
「まだ終わらねぇ!」
再びの一撃。
オーガの咆哮が森に響くが、その叫びもカイルの渾身の突きでかき消された。
――その姿はまさに修羅場を生き抜く戦士。
戦いを終えたカイルは、血に濡れた剣を拭いながら村人に微笑んだ。
「もう大丈夫だ。俺がいる限り、この村は守られる」
村人たちは涙を流し、子供がカイルに抱きついた。
俺も現場に駆けつけ、その光景を目にする。
カイルは俺を振り返り、真剣な眼差しを向けた。
「レティシア様。俺はただの放浪者だった。でも、あなたに出会って剣を振るう意味を見つけた。
この刃はあなたと、この領地のためにある」
……真正面からそんなこと言われると、心臓に悪いんだが。
家臣たちは口々に「辺境伯領最強の剣士」と称え、村人は「英雄様だ!」と叫んだ。
俺は心の中で頭を抱える。
――これが逆ハーレム候補の一人? スペック高すぎだろ……。
にぱぁスマイルでごまかしたが、カイルの眼差しは微塵も揺るがなかった。
剣士としての力、民を守る心、そして俺への真剣な想い。
間違いなく、彼は本物だ。
次回予告
第十二話 孤高なる魔術師ロイ――知と炎を操る者
村を襲う盗賊団。だが彼らを迎え撃つのは、魔術師ロイ。知性と魔力を兼ね備えた青年が、圧倒的な力で辺境を護る。その戦いぶりは、まさに知と炎の化身――。




