第十話 逆ハーレムの行方――彼女が選ぶ答えは?
剣士・魔術師・王子、そして新キャラまで入り乱れるドタバタ回です。
「今日こそ決着をつける!」
屋敷の庭に、なぜか剣士カイルと魔術師ロイと王子クラウスが並び立っていた。
……いや、なんでお前ら揃って庭に集合してるんだ。誰が召集した。
「レティシア様を守るのは俺だ!」カイル。
「知恵を支えるのは私です!」ロイ。
「いや、伴侶になるのはこの私だ!」クラウス。
三人同時に声を張り上げ、庭師が剪定バサミを落とすレベルの騒がしさ。
……ここは王国最前線の辺境伯領のはず。なぜ空気が学園ラブコメなんだ。
「ならば、実力で示そう!」とカイルが剣を抜く。
ロイは杖を構え、クラウスは得意げにマントを翻す。
――おい待て、庭を戦場にする気か!?
俺は慌てて両手を広げて制止した。
「や、やめなさい! 戦う必要なんてないでしょ!」
するとクラウスがキラリと笑って言った。
「ならば模擬決闘だ。勝った者に“デートの権利”を与える!」
……お前、何を勝手に恋愛ゲームに仕立ててるんだ。
模擬決闘は、なぜか領民まで観客として集めて始まってしまった。
剣士カイルは華麗な剣技を披露し、観客の女性たちを黄色い悲鳴で沸かせる。
魔術師ロイは火花を散らす呪文を操り、子供たちを「すげー!」と感動させる。
王子クラウスは……ただ立って笑顔を振りまくだけで「殿下ぁぁ!」と熱狂が起こる。
……なんだこれ。俺の領地がアイドルコンサート会場になってるぞ。
結局、模擬決闘は決着がつかなかった。
「互角だな……!」
「ふん、認めよう」
「いや、最後に勝つのは私だ」
三人とも譲らず、視線が一斉にこちらに向けられる。
「レティシア様! デートするなら誰と!?」
……やめろぉぉぉぉぉ!
そんな選択肢、俺の人生設計に入ってないから!
俺は必死に笑顔を作り、必殺技を発動した。
「にぱぁぁぁ」
場が一瞬止まり、三人とも顔を赤らめて硬直する。
――よし、時間稼ぎ成功。
だが、その場を凍らせた次の瞬間、観客席からひとりの青年が飛び出した。
「お待ちください! レティシア様!」
……誰だ今度は!?
見れば、商会の若き後継者だ。
「あなたの経済改革に心を打たれました! どうか私の花嫁に!」
観客が「第四の男だ!」「新キャラ参戦!」とざわめき、三人の目がぎらりと光る。
――いやいやいや、登場人物増やすな! 俺は内政したいだけなんだ!
結局その日は、模擬決闘も新キャラ参戦も収拾がつかず、俺は強制的に全員を追い出した。
ベッドに倒れ込み、天井を見ながらつぶやく。
「……逆ハーレムって、KPI管理できないんだな」
農業改革も交易も数字で整理できたのに、モテ期だけはどうにも制御できない。
唯一の防御策は――笑顔、にぱぁスマイル。
俺は枕を抱きしめ、深く息を吐いた。
「頼むからもうこれ以上、攻略キャラ増えないでくれ……」
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次回予告
第十一話 辺境を狙う影――裏切りと暗殺計画
ラブコメ騒動の裏で、着々と進む不穏な動き。辺境伯家を揺るがす裏切り者と暗殺計画が迫る。笑顔だけでは防げない、本当の危機がレティシアを試す――!




