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辺境伯令嬢は内政チートで世界を変える ~そして聖女は大陸を笑顔で包み込む~  作者: 赤井咏紗
第一部 神童と呼ばれるおっさん
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第九話 内政チートの真価――戦争回避と同盟成立

最後に「赤子時代からの必殺技=にぱぁスマイル」を炸裂

 王都の派閥争いは、ついに武力衝突寸前にまで至っていた。

 第一王子派と第二王子派、それぞれが軍を動員し、国境に近い地域へ圧力をかけ始めたのだ。


 「もし両派が戦争を始めれば、辺境は補給路として必ず巻き込まれる」

 父アルノルトの声は低く重い。

 「避けねばならん。だがどうやって……」


 会議室に沈黙が落ちる。

 俺は深呼吸し、立ち上がった。

 「戦を止める方法は一つ。両派が“互いに手を出せない状況”を作ることです」




 俺は帳簿と交易データを広げ、数字を叩きつけるように示した。

 「食糧と塩の供給源は辺境に集中しています。これをカードにするのです」


 「カード?」財務官が首をかしげる。

 「はい。両派の代表を呼び、正式に“辺境経済同盟”を結ばせます。

  ――つまり、争えば供給が止まり、両派ともに飢える状況を提示するのです」


 騎士団長がうなる。

 「なるほど……剣ではなく、胃袋を人質に取るか」


 父は沈思し、やがて頷いた。

 「よし。会談の場を設けよう」





 王都から第一王子派と第二王子派、それぞれの使節が辺境伯領にやって来た。

 会場は屋敷の大広間。

 両陣営の代表が互いに睨み合い、空気は火花のように張り詰めていた。


 「辺境伯令嬢、我らが取引を独占すべきだ」第一王子派。

 「いや、第二王子こそ正当なる後継だ。供給は我らに」第二王子派。


 ……予想通り、話し合いは泥仕合になった。

 父の表情は険しさを増し、家臣たちも困惑している。


 俺は一歩前に出て、静かに口を開いた。

 「皆さま。数字をご覧ください」





 羊皮紙に描かれたグラフを示す。

 「麦の収穫は三割増加。塩の供給は五割回復。しかし――」


 俺は視線を鋭くした。

 「双方に独占させた場合、必ず市場が崩壊します。結果、国全体の飢饉。

  あなた方が勝とうが負けようが、王国そのものが滅びるのです」


 代表たちは息を呑む。

 父が低く言った。

 「つまり、勝者なき戦いになると?」

 「はい。だからこそ必要なのは“勝つこと”ではなく“生き残ること”。

  それを保証できるのは、この辺境経済同盟です」





 しかし、第一王子派の代表が机を叩いた。

 「子供の戯言に我らの命運は預けられぬ!」

 第二王子派も負けじと叫ぶ。

 「辺境ごときが王都を左右するなど許されん!」


 場の緊張は頂点に達した。

 剣が抜かれそうになる気配――。

 父が立ち上がろうとしたその瞬間、俺は前に出た。


 ――ここだ。最後の切り札を使うとき。





 俺はゆっくりと両派の代表を見渡し、

 赤子のころから鍛え続けてきた必殺技を発動した。


 「にぱぁぁぁぁぁ」


 ……場が止まった。


 第一王子派の代表が口を開け、第二王子派の代表が目を瞬かせる。

 次の瞬間。

 「……あ、あの笑顔……」

 「尊い……」


 剣が鞘に収まり、ざわめきが溶けていく。


 俺は畳みかけた。

 「どうか、王国の未来のために……手を取り合ってください」


 声は震えていたが、笑顔は完璧だった。

 ――にぱぁスマイル。これ以上の外交兵器はない。





 沈黙の後、両派の代表は顔を見合わせ、やがて深く頷いた。

 「……辺境伯令嬢の願いを無下にはできぬ」

 「経済同盟を受け入れよう」


 大広間に安堵の吐息が広がった。

 父は胸をなでおろし、母は涙ぐみ、家臣たちは感動で震えていた。


 こうして「辺境経済同盟」が正式に成立。

 王国は戦争の瀬戸際から救われたのだ。





 夜。

 机に積まれた契約書を前に、俺は深いため息をついた。


 ――数字で縛り、笑顔でとどめ。

 まさか「にぱぁスマイル」が国家規模の交渉に使えるとはな……。


 だが、これで確信した。

 俺の武器は前世の知識と、この体に宿った笑顔の力。

 両方を駆使して、この国を動かしてやる。

次回予告


第十話 逆ハーレムの行方――彼女が選ぶ答えは?

政争を収め、一躍「国を救った令嬢」として名を轟かせたレティシア。だがその名声は、再びモテ騒動を呼び寄せる。剣士、魔術師、王子、そして新たな求婚者まで……。彼女は“誰と生きるのか”という問いに向き合うことになる。

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