第四部・第二十二話(第92話) 再会の刃
黒衣の残党たちに囲まれ、私は星図盤を構えて必死に応戦していた。
光の矢を放っても、彼らの呪符が絡みついて進路を塞ぐ。
「くっ……! 時間を稼ぐしか……!」
そのとき、背後から鋭い声が響いた。
「レティシア! 下がれ!」
光が奔り、黒衣の一人が弾き飛ばされた。
ライガの剣が煌めき、私の前に立ちはだかる。
「親友、遅れてすまない」
その背中に、安堵で膝が抜けそうになる。
「ライガ……! 無事でよかった!」
すぐにルビヤも駆けつけ、拳で呪符を粉砕した。
「女親友! 一人で突っ走るなんて危なっかしいにも程があるわよ!」
「……だって、置いていかれるの嫌だったから」
思わず本音が漏れると、ルビヤは一瞬目を見開き、すぐに笑った。
「ほんと、しょうがない子なんだから」
だがその隙を狙い、黒衣の一人が呪具を掲げた。
「供物は紅眼だ!」
黒い刃がルビヤに飛ぶ。
「ルビヤっ!」
私は叫び、咄嗟に彼女を庇おうと飛び出した。
しかし――間に割って入ったのはライガだった。
剣を横薙ぎに振り、黒い刃を弾き返す。
火花が散り、衝撃で床にひびが走った。
「ぐっ……!」ライガの肩が焼ける。
「ライガ!」
彼は痛みを押し殺し、低く笑った。
「これくらい、親友の盾なら当然だ」
私は怒りで震えながら星図盤を掲げた。
「風と光よ、私に力を!」
星の軌跡が走り、残党の呪符を絡め取って弾き飛ばす。
ルビヤも追撃の拳を叩き込み、最後の残党を地面に沈めた。
広間に静寂が戻る。
私はライガの肩を支えながら言った。
「ごめん、私のせいで……」
「謝るな。俺はお前の盾になると決めた」
ルビヤも真剣な瞳で言葉を重ねる。
「そして私は、アンタの隣で戦う。
凶兆なんかじゃないって、証明するために」
私は二人の手を握り、強く頷いた。
「ありがとう。……一人じゃないって、やっぱり最高ね」
残党の残した呪具が光を放ち、迷宮の奥への道が示された。
「黒幕は、さらに先にいる」
私は息を整え、仲間たちを見渡した。
「行こう。星譜の心臓を見つけ、この闇を終わらせるために!」
仲間たちが頷き、三人の影が迷宮の奥へと進んでいく。
次回予告
第93話「砂炎の回廊」
灼熱の炎が渦巻く回廊。
精霊の力を制御しなければ進めない試練が待ち受ける――。




