表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/192

第四部・第二十一話(第91話) 砂塵の追走

 儀式の広間を抜け、残党を追いかけた瞬間だった。

 「走れ!」ライガの叫びと同時に、迷宮全体が揺れた。


 天井から砂と岩が崩れ落ち、通路を分断する。

 ルビヤとライガは向こう側、私は一人こちら側に取り残された。


 「レティシア!」

 「お姉さま!」遠くから声が響くが、砂塵が視界を遮る。


 私は手を振り返し、精一杯笑顔を作った。

 「大丈夫! 合流するから!」

 (内心めちゃくちゃ不安なんだけど……!)



 砂塵の中、黒衣の残党たちが逃げる影を見せた。

 「待ちなさい!」

 私は星図盤を掲げ、風精霊を呼び出す。

 「風よ、砂を払って道を示せ!」


 視界が晴れると、曲がりくねった通路が浮かび上がった。

 残党たちは黒い呪具を抱え、奥へ奥へと走っていく。


 「……やっぱり、黒幕に繋がる鍵を運んでる」


 私は躊躇せず後を追った。





 走りながら、胸が締め付けられる。

 (ルビヤとライガがいない……仲間がいないと、心細さが倍増だ)


 思い出すのは、信の間で見た幻影の言葉。

 「お前はただのおっさん。聖女の器じゃない」


 「……うるさい。今は聖女だ。誰も救えなかった前世の俺とは違う!」

 私は自分に言い聞かせ、足を止めない。





 通路の床が急に崩れ、私は反射的に飛び退いた。

 どごん!

 下は奈落。もし気づくのが遅れていたら終わっていた。


 「くぅ……完全に私を殺すための罠ね」


 さらに壁の隙間から矢が雨のように降り注ぐ。

 私は精霊に叫んだ。

 「風よ、盾となれ!」

 矢は風に弾かれ、床に散らばった。





 やがて、黒衣の残党三人が立ち止まり、こちらを振り向いた。

 「聖女をここで仕留めれば、我らの勝利だ!」


 「やれるもんならやってみなさい!」


 私は震える膝を押さえつけ、星図盤を構えた。

 風と砂が渦巻き、光と影がぶつかり合う。





 戦いの最中、残党のひとりが呪具を掲げた。

 そこから響く声。

 「……聖女よ。孤独に沈め。仲間はお前を救えぬ」


 黒幕の囁きに、背筋が冷たくなる。

 だが私は、ぐっと歯を食いしばった。

 「違う! 私は一人じゃない! 必ず仲間と再会してみせる!」


 叫んだ瞬間、紅い光が通路を照らした。

 ――ルビヤの瞳の輝きだ。


 「レティシア! 待たせたな!」ライガの声も響いた。





 遠くで仲間たちの気配を感じながら、私は残党たちに向き直る。

 「ここで終わらせる。仲間のもとへ戻るために!」


 星図盤が強く光り、戦場を包んだ。

次回予告


第92話「再会の刃」

孤立していた聖女のもとへ仲間が駆けつける。

しかし、黒幕の刺客が放つ一撃がルビヤを狙う――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ