祖父の懐かしい想い出
新規として小説書いてみました、ナムさんです。
今回は試しにプロローグらしきものを製作しました。
ここから発展したものをのちのち出したりしていくので、よければ少しでも見てってください。
読者の皆さん、よろしくお願いします〜
身を知る雨の降る頃に
時間はもうすぐ午後七時になろうかという頃、窓をチラッと覗いて見てもまだ雨がザーザーと止まずに、塾で出されるムズカシイ問題、みんなと上手くやってるあの子、出来の悪い鶴の折り紙、まだ先が見えないゴール———あらゆるものをまるでかき消してしまうかのようだった。光に晒されて、勉強机に描かれた落書きを一生懸命消しゴムで濁しながら、私は今日の晩御飯について考えを巡らせていた。
母は、弟を迎えについさっき、小学校へ出かけに行った。一昨日からの巨大台風接近のニュースなどで連日の情報番組のプログラムはほぼそれに染まっていたのだが、私が住んでいる地域も台風が接近してきているらしく、どうやら地域全域に避難警報が出たとのことで彼女はとても焦燥した様子であった。隣町の祖父宅に避難できたのはいいものの、弟の小学校側の緊急連絡メールによると警報が解除されるまで弟はしばらくの間動けないので、家族全員が集まることができたわけではなかった。ほんの少し心配であった。
「今お母さんから電話があったよ、結奈。向こうはひどく雨が降ってるらしくてねぇ。もう章大は拾ったから、家の戸締まりをきちんとして、もうすぐ帰ってくるよ」少し休憩がしたくて、居間に顔を覗かせた時、おじいちゃんは落ち着いた雰囲気でそう話してくれた。私は不思議だった。「おじいちゃん、怖くないの?」「何を怖がるんだい?ああ、台風か…大丈夫、すぐどこかの、遠いところにね、お天道様が追っ払ってくれるんだよ。」「うん…ありがとう」私にオテントサマやホトケサマといった言葉はもう通じなかった。それでもやはり、こんなことを経験することもなかった私は、怖気ついていたのか、今の私に祖父のような存在がいることは、せめてもの安心材料だった。
「…怖いのかい?結奈は」「まぁ、ちょっとビビってるかもしれない。台風が来て、おじいちゃんのウチに移るなんてなかなか無いし…」祖父はなかなかの金持ちだ。昔はバリバリやってたらしく、仕事などやる事なんでもそつなくこなせるタイプの人だったらしい。今でも身体に異常はなく健康に日々を過ごしている。勿論家には彼の昔の栄光が垣間見える、賞状や使い古した万年筆コレクションなどあって、相棒のガラケーはいつもシャツの胸ポケに畳まれている。「まァ…大丈夫。怖いなら、一つおじいちゃんがお話ししてあげるよ。」「…どんなの?」
「そうだなぁ…まあ…絵奈には早いかもな。でも、怖い時にな、おじいちゃんも思い出すんだ。このお話しのことをね。」私は惹かれた。正直もう今が怖かった。そしてそこに、私が耐えられるような余裕はなかった。「…」「…聞きたいな。おじいちゃんの話。」「そうかそうか、はは…」
彼は真面目そうな、とても過去を懐かしむような様子で、話を始めた。それは彼が経験した、今でも忘れられない、彼にとっては最後の…当時の私にとっては不思議なモノガタリだった———私は準備が出来ていた。