04話 破壊神辞めます
倒れていく真由美の背後には、破壊神に下僕と呼ばれていた男が立っていた。
すぐに真由美ちゃんを助けないと、そう思うが腕の中で意識を失っている明日香を放り出すことも出来ない。
「真由ちゃんから離れろっ」
破壊神の手下にそんな言葉が通じるとも思えないが、梨沙は声を振り絞ってその男に向かって叫んでいた。
「そう睨まないで下さい。これでも私はあなた達と同じで、女神に召喚された人間なんですよ。」
男は困ったよような顔をしながらそう答える。
「寧ろ、どちらかと言うとあなた達を助けようとしているんですがね。あ、この子が倒れたのは私とは関係ありませんからね。さて、」
男が倒れている真由美に手をかざすと、真由美の体が弱い光に包まれる。
「やめ、ろぉー!」
梨沙は明日香を抱えたまま立ち上ろうとする。あんな奴の言う事を信じられるわけがない、仲間を助けなければ…
しかし、立ち上がろうとするも身体に力が入らず抱えた明日香と共に崩れ落ちてしまう。
「無茶はしない方がいいですよ。あなたにもすでに影響が出ている。」
いつの間にか男は、梨沙と明日香の傍に来ており、真由美にしていたのと同じようにこちらに手をかざしている。
「さて、この空間に存在しているあなた達の身体を『絶対不変』で固定化しました。この状態なら、どんな攻撃や魔法であっても傷一つ付けることが出来ないんですが、どうなる事やら。」
「え、影響?固定、化? さっき、、から、何を、、言っている、の」
梨沙は苦しそうに言葉を発する、先ほどまでより明らかに影響が大きくなってきている。
「……破壊神様、どうやら私の能力では防げないようです。申し訳ありません。」
「そうか、致し方あるまい」
真由美の身体が光の粒子になり溶け出していく、それに続くように明日香と梨沙の身体も粒子になり消失していく。3人の姿が完全に消え去った王の間には、これまでと何も変わらずに、破壊神と下僕の2人のみが静かに佇んでいる。
「遺体は残らなかったか。此れまでにも何度か同じように消えていった者達がいたか、何か女神の力と関係しておるのか。」
これまで、倒されていった者達の事など気にもしていなかった破壊神が、珍しく興味を示している。下僕は考えてみるが、思い当たる事と言えば一つしか無かった。
「多分、元の世界に強制帰還されたのでは無いかと思います。」
初めての召喚時に女神イリスから、そのような説明を受けた事を思い出していく。
「確か、召喚されてすぐは、元の世界の座標と繋がりがある状態となっていて、完全な召喚完了状態ではないという事だったと思います。この状態を維持しておく事により、目標達成後の帰還が簡易に行える他、死亡時には強制的に召喚状態をキャンセルし帰還出来るとも言っていたと記憶しています。」
「ならば下僕も死ねば元の場所に帰る事になるのか。どれ、試してみるか。」
破壊神の手のひらに破壊の力が集まる。
「ちょ、ちょ、ちょい!?真顔でヤバい事試そうとしないで下さいっ!私は死んだら本当に死んじゃいますから!」
元々、日本に帰る事に執着のなかった下僕は、完全に繋がりを絶ち、完全召喚状態になった方が強い力を得られる可能性が高いと聞いて、迷わず繋がりを絶つ事を選んでいたのだ。
「ふむ。まあよい。とにかく彼女らは下僕が居た世界の日本に帰ったのだな。」
「正確には、地球と呼ばれる星にある多くの国の中の一つに、日本と呼ばれる国がありそこに帰ったのだと思いますよ。」
「ふむ。」
破壊神は何かを考え始め、黙り込んでしまった。
そして、、
「決めたぞ。下僕よ。」
「はい?何をでしょう。」
「我は、破壊神やめる」
「へ!?」