03話 破壊神育成しました
破壊神様と過ごすようになり、話を聞いていくにつれこの御方の事が少しづつ理解出来るようになってきていた。
要はこの御方の感性、感情、個性、と言った部分は産まれて間もない子供の様な状態なのだと。
自我を意識したのはロウインで敵という存在に出会ってからだと言うし、せっかく自我を持てても、やってくるのは自分を倒そうとやっきになっている連中ばかり、倒さずにいても破壊神の特性により傍にいるだけで、皆壊れてしまうので話をする事も出来ないときている。
結局、自我があろうがなかろうが、この御方はずっと一人きり、孤独の中にいたのだ。
日本でも、異世界でも一人で引き籠っていた私は、そんな破壊神様に親近感を覚えるようになっていった。そして、私が話し相手となり、この御方の自我を育てて行こうと。
それから150年、破壊神様の自我は立派にそだ、、つはずも無いんだなそりゃ。思い出して見て欲しい。私は子供の頃以外は殆ど部屋で引き籠っていただけだし、異世界召喚後も、バトルするか、引き籠るかしかしてないんだから、まともに子育てなんて出来るわけがないんですよ。
とりあえず、子供には漫画やゲームを与えておけって殆どノリだけで、チート能力『サーチボックス』を使用し、日本にいたころの私の愛読書やゲームを、片っ端から破棄神様に与えてみたんだ。
結果、誕生してしまった。。。キモオタニートの意思を継ぐ、中二心満載の真・破壊神様が…
後悔? ふ。していないさ。
そして、最近の破壊神様のお気に入りと言ったら、転生系おれつぇぇハーレム要素有。だったわけだから、こうなってしまったのも突然ではなく必然だったという事なのさ。
というわけで、場面は先ほどまで遡る。
「は!?」
「は!?」
「は!?」
何かの聞き間違いか、3人は状況が理解できず困惑の表情を浮かべている。
「破壊神様。」
「なんだ下僕よ。」
「ハーレムに加えるっておっしゃいましたけど、そもそもハーレムなんて持ってないじゃないですか。」
「うむ。下僕の言う通りなのだが、これは致し方なかろう。何故ならたった今思いつたことなのだからな。3人の美少女とイチャイチャしたい。つまりハーレムなのだからな。」
何がどうつまりなのか、常人には理解出来ない事であったが、破壊神の育ての親とも言うべき下僕にはわかっていた。
つまりはノリである。
3人の女のなかで一番気の強い明日香は、破壊神と、謎の男の会話を聞いている内に、困惑も無くなり話の内容が理解出来てくると、今度は怒りの感情が押し寄せてきていた。
「ふざんけてんじゃねーよ、おめーら!ハーレムなんてもんに入ってお前の慰み者になるくらなら死んだ方がましだぜ!」
「そ、そうですよぉ、そういうエッチぃのはいけないと思いますぅ。」
「私たちは、破壊神であるあなたを討伐する為にここまでやって来たんです。そんな言葉に惑わされたりしません。」
真由美と梨沙も、明日香に続いてそう言い放った。
破壊神はわからないと言った表情で3人に尋ねた
「お主らは、異世界から召喚された者達なのであろう。異世界召喚、美少女、つまりはハーレムではないのか。」
何も疑う事無く本気でそう言ってる様にしか思えない破壊神の言葉を聞き、3人は顔を合わせる。
「だめだありゃ、話が通じねータイプの野郎だ。」
「そうみたいね。それなら私たちの目的は始めと何も変わらいね。破壊神を倒そう。」
「梨沙ちゃん、明日香ちゃん、早くした方がいいかもぉ。この部屋に入るまえからずとぉ『絶対防御』を使ってるんだけどぉ、女神様の加護がどんどん弱くなってきてるのぉ」
3人はお互いに目を合わせて頷いた。
「話が通じねーなら、この拳で分からせてやる」
明日香の姿が掻き消えた瞬間、王座に座る破壊神の目の前に現れる。
「くらえ!」
完全に虚を付いたタイミング、強烈な拳打が破壊神に炸裂する。と思われた瞬間、明日香の拳は破壊神にあたる直前で止まっていた。
「なっ!?」
驚くと共に、瞬間的に明日香は梨沙と真由美の居る位置まで飛び下がった。
「くっ、梨沙っ、今度は2人同時にいくぞ!」
先制の不意打ちは通じなかったのだから、ここからは真っ向勝負の総力戦となる。
「うん。真由ちゃんはサポートをお願いね。」
そう言うと梨沙は『勇気ある者』の能力の一つを発動する。この能力は使用者の意思の強さをそのまま反映した強力な武器を出現させる事が出来る。梨沙の手には一本の長剣が出現した。
その剣の名は使用者に勝利をもたらすとされる。ジークシュベルト。
明日香と梨沙はそれぞれ左右に分かれ、破壊神を挟み込むように急接する。強力な剣激と拳打が同時に破壊神を襲うが、結果は最初の攻撃の時と同じで、破壊神に届く事は無く、直前で見えない壁に阻まれてでもいるかの様に止まってしまう。
「くそっまたこれかよ。」
そう言いながらも明日香は連続で拳打を繰り出していく。梨沙も同じように剣激を繰り出すが2人の攻撃は破壊神に触れる事すら出来ないでいた。
「くそ、真由美の絶対防御みたいな結界でも張ってやがんのかよ。」
明日香の声には焦りの色がにじみ出ていた。現状はこちらの攻撃が全く効かないと言う最悪の状況にみえているが、これはまだ最悪の状況ではないのだ。
なぜなら破壊神はここまで一切の反撃のそぶりを見せていない。ただただこちらが一方的に攻撃している状況。もし、破壊神の反撃が始まれば今よりも酷い状況になるのは目に見ている。それがわかっているからこそ今のうちにと焦りが生まれる。
「梨沙。『重見天日』を全力で使うから少し離れてろ」
「真由美は、足場を頼む」
梨沙は後方に下がり、真由美は『絶対防御』の能力を使い、破壊神の周りに無数の防御壁を作り出す。明日香は呼吸を整え、意識を集中させていく。
『重見天日』は使用者の身体能力大幅に向上させる能力があるが、全力で使用した場合は更なる能力を発動させる事が出来る。攻撃を連続で重ねれば重ねるほど、攻撃の威力が上昇していき相手がどれほど各上だったとしても最終的には相手を上回り撃破する事が可能となる。
一見どんな相手も倒せるチート能力の様に思えるが、使用者への負担が大きく長時間は使用出来ないし、普通は相手の反撃もある。各上の相手の攻撃を避けつつ攻撃をし続けるという事が難しい事を考えると、そこまで使い勝手の良い能力とは言えない。
しかし、現状は破壊神の反撃は無い状態なので、もっとも最良な状態で能力を使うことが出来るといっていいであろう。
明日香の身体が光のオーラに包まれる。発動準備が整った。
「梨沙、激励を全力で頼む。」
『重見天日』で強化された身体を、梨沙の『勇気ある者』の能力、激励で更に強化する。
「行くぜ。神速乱打、百花繚乱っ」
百花繚乱は、真由美の『絶対防御』により作り出された、拒絶するものを弾き飛ばす壁、を利用し超速移動をしながら連続攻撃を行う協力技である。今の場合は、明日香本人を拒絶する防御壁を、空間に無数に配置し、明日香が壁に触れた瞬間に発生する反発力を利用し、次の壁に向かうのを繰り返し行う事により、反発力で得たスピードがどんどんと増加し加速して行く。
明日香は、破壊神の周りの空間をまさに目にも留まらぬ速度で移動しながら、連続攻撃を行っていく。ほんの数秒の間で、すでに100を超える攻撃を行っており、明日香の攻撃力は始めと比べ物にならないほど上昇しているが、今だ破壊神には攻撃が届いていない。
「ま、だ、まだぁぁぁっ!」
しかし明日香はあきらめない。更に速度加速させ連続攻撃を続ける。
明日香の猛攻にさらされながらも、破壊神は焦る事も無く下僕と会話をしていた。
「彼女たちの見た目と、呼び合う名前から察するに、私と同じ世界からの召還者かと思いますよ。」
「ふむ。お主達の世界の美的感覚では我はどのように映るのだ。」
「まぁ、控えめに言っても無しでしょうなー。と言うか、見た目云々依然に、同じ空間に長時間居られない時点でアウトなのではないかと。」
「うむ。やはり、神の力をどうにかしないとならぬようだな。」
ハーレムを拒否された理由をまじめに話し合っていた。
「しかし、そろそろ限界が近いようですよ。」
下僕は、彼女たちに授けられた女神の加護が消えかかっている事に気づき、そう言った。
「下僕。女神の加護が消えたら、お主の能力でなんとかならぬか試してみよ。」
「やるだけやってみますが、あまり期待しないで下さいよ。前にも言いましたが、私の能力は破壊神様には通じなかったんですから。」
破壊神と下僕の会話中も、明日香は攻撃の手を止めず既に数百、千にも届く勢いで猛攻を仕掛けていたが、突如、空間に設置されていた足場がなくなり床に叩きつけられた。
「ぐぁっっ、がぁ」
「明日香っ」
梨沙が叫び明日香に駆け寄る。
「大丈夫!?明日香っ」
明日香を抱き起すが、意識がない。叩きつけられた衝撃で気を失ってしまったらしい。
「真由ちゃん、明日香が、、、
後ろを振り返り真由美にそう言いかけた梨沙の目には…
力なく倒れこんでいく真由美の姿が映っていた