密会は映画の様に
今日も私と彼は、逢瀬を重ねる。
人気のない夜の公園で待ち合わせ、ベタなデートも程々に、メインは専らラブホデート、キャッ♡
そんな彼との出会いはマッチングアプリ。見事意気投合し、無事カップル成立となりましたとさ。めでたしめでたし。
しかし問題勃発。
私は独身だが、彼は妻子ある既婚者であった。
そう、私は彼の愛人で、絶賛不倫中と言う訳なのだ。
彼曰く、夫婦仲は冷めきっており、世間体を気にして、ただ離婚していないだけとの旨。
まあ、どんな理由であれ、不貞行為が社会に認められる筈も無いし、彼の家庭を壊す行為に違いはない。
依て、浮気なぞ続けていても絶対に幸せにはなれないし、もう斯様な関係は終わらせるべきだと決心した次第。
なので、本日は彼にお別れを告げる気満々な私である。
あーあ。それにしても遅刻常習犯の彼は、例によってまだ来ないし、暇潰しにスマホでニュースサイトでも見てよっと。
え~、何々? 「全世界で動く屍が大量発生し、人々を襲っています。まずは落ち着いて、身を守る行動を」ですって?
ん? 今日ってエイプリルフールでもハロウィーンでもないよね?
と、そがな事を思っていましたら、園地に現れる人影が一つ。やれやれ、やっとこさ彼がお出ましかな。超絶待ち草臥れたよ。
ゆっくりと近付いて来るその黒き影は、何だか酔っ払いみたくフラフラと蹌踉めいて、正にホラー映画のゾンビみたいな……。
ぬおっと、尊顔を確認出来ちゃう距離にまで接近してきた影は彼ではなく、全く見知らぬ人物で、しかも血まみれだい。
え、嘘でしょ? つか、TVのドッキリとかだよね?
そいで引き続き、件の人物は「ア゙~」と呻き声を上げながら、ジワジワと私に迫って来ているんですけど。
ここで、ふと人物の腹部に目を遣れば、内臓がモロ見え状態ですし、よく見りゃ目玉も片方無いし。
あ、駄目だ、これマジだ。こいつは紛れもない現実だと、私の鋭過ぎる勘も、そう仰っていやがるもの。
私は文字通り膝から崩れ落ちて、ヘタヘタとへたり込んでしまった。
はい、死んだ、私。
そう覚悟した刹那、「ゴシャッ」と言う鈍い音と共に、正面の人物は横側へと吹っ飛ばされ、飛び散る鮮血。
そして、私の眼前には金属バットを握る、勇ましき姿の彼を視認する。直後、彼の開口一番&私の受答はこうである。
「遅れて御免よ♥」
「んもう♡全然許しちゃう♡これからもずっと一緒だよ♡」
※「私」と「彼」と「人物」は性別の選択が可能です。どうぞご自由に、お好みでお楽しみください。