覚醒 1
「うーむ。この反応は何かのう?」
ここはベイリン領のシュバルツ村の神殿だ。
今日は俺・エレンが15歳になったので、スキルを授かりに来ていた。
この世界では15歳になった者には神からスキルを授かり祝福される。
「コブ爺。勿体ぶってないで早く教えてくださいよ」
コブ爺ことコブゾウはこの村ただ一人の神官だ。
「こんな反応見た事なくてのう・・・。お主のスキルは【配合】だそうだ」
一緒に神殿まで来てくれていた友達はみんな『???』になっていた。
今まで前例がない為、喜ぶに喜べない。
「みんな・・・俺のスキルは【配合】だって・・。」
ぎゃはははは!一同は一斉に笑い転げる。
「エレン!お前そんな役に立たなさそうなスキルに頼らず無難に生きた方がいいよ!何なら俺の秘書にでもなるか!?」
そう言ってくるのは先日【賢者】のスキルを得た、マウンティングが生き甲斐のロサス。
「そうそう。飲食店や農業だっていくらだって仕事はあるわ。気を落とす必要なんてないのよ!」
こちらも先日【ヴァルキリー】のスキルを得た、しっかり者のメイ。
「そんな落ち込むなよ。確かに聞いた事ないスキルだけどチート級のスキルかもしれないじゃん」
まだ祝福されていない、一番の親友カイル。
「・・・・。」
「今日の祝福はここまで。今日は各々もう家に帰るのじゃ」
コブ爺に言われみんなは家帰る。
「エレンよ。前例がないから役立たんとは限らんよ。むしろこの世で唯一無二のスキルかもしれんしのう。腐らずにの」
「ありがとう。コブ爺。【配合】スキルで何が出来るのか探してみるよ」
家に帰り、ありのままを家族に話した。
俺には兄弟はいない。両親は一人っ子の俺を可愛がって育ててくれたからこの件に落胆してしまうかもと思ったが、そんな事はなく精一杯生きなさいと応援してくれた。
【配合】スキルとは何か・・・自分の部屋に籠り2つ薬草を用意し配合に挑戦する。
心の中で唱えようが、声に出そうが何も起きない・・・。
「やっぱりこのスキルは役に立たないのかもしれないなー」
明日みんなにスキル発動のコツでも聞いてみよう。今日はもう寝よ。
Zzz―――――。
Zzzzz――――――――――。
―――――――――――――――『ピコン!スキル【配合】正常にインストール完了しました』
『続いてスキル【配合鑑定】のダウンロードを行います。しばらくお待ちください』
・・・・・『ピコン!スキル【配合鑑定】正常にインストール完了しました』
『これにてインストール作業は終了します。脳内音声ガイダンスはONになっております』
―――――――――――――――Zz。
翌朝。
目を覚ますと昨夜の夢のような出来事を思い出し、急いで薬草を2つ用意する。
薬草を見ると勝手に鑑定される。
名称 薬草(F)
説明 どこにでもあるただの薬草。多少回復してくれる。
『配合しますか? Yes・No』―――――「Yes」。
薬草同士がくっつき一つに生まれ変わる。
名称 薬草(E)
説明 どこにでもある薬草。多少回復してくれる。
え・・・ランクが一つ上がったし、説明も少し変わってる・・・。
これって繰り返せば(S)まで行くんじゃないか!?
「何!?スゲー!!!」
「他に何が出来るんだろう。外に行って確かめないと!!」
父さんと母さんにおはよ!行ってきまーす!と挨拶をし家を飛び出す。
外には様々な物が鑑定可能であり、俺には素材にしか見えなかった。
しかし驚くべきは村人も素材として鑑定できる・・・。
鑑定できるとゆう事は人同士でも【配合】できてしまうって事だろう。
恐ろしい・・。
人目につかない近くの森へ行き、モンスターを探す。
ピョンピョン!ホーンラビットを発見した。
ホーンラビットはウサギに角が生えている魔物だが、弱いので村人でも容易に倒せる。
しかし油断すると角で体を抉られてしまう。
後ろから静かに近づきサバイバルナイフで仕留める。
やはり素材表示される。
名称 ホーンラビット(F)
種族 魔物系
説明 どこにでもいる角兎。繁殖力が強い為すぐに増える。
死んでいても素材表示されるのは素材として生き死には関係ないって事か。
もう一匹いないか探し始めると今度はスライムを発見した。
こちらも先程同様に仕留める。
スライムは体の中心に核があるのでそれを壊すと討伐できる。
名称 スライム(F)
種族 魔物系
説明 ありとあらゆる所に生息している。身の危険を感じると水たまりのように変化する。
ホーンラビットとスライムを並べると脳内音声ガイダンスが。
『配合しますか? Yes・No』―――――「Yes」
二匹は一つになり、更に生き返った。
見た目にも変化が。
名称 ホーンスライム(F)
種族 魔物系『主・エレン』
説明 森にのみ生息している。スライムに角が生えただけ。
HP 18
攻撃力 12
防御力 8
素早さ 16
自分で配合したモンスターはパラメーターの表示が追加していた。
(俺が主になったって事だよな・・・・)
こちらを向いて動こうとしないホーンスライム。
「あの手前の木に角で攻撃!」
すると命令通り木にアタックした。
「お前・・・俺の言ってることが分かるのか・・・魔物のくせに」
俺の【配合】スキルはとんでもない代物だった事を知り、少し震えた。
ホーンスライムにはホン吉と名付けた。