表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

LEVEL g

【2034/05/28 05:55】

男性と接するようになって分かったのだ

が、男性は性格もかなり変わっている。

喋れないのに、何処か積極的な部分が見

え隠れしたり、急に警戒を強めたりする

。でも、私には全てを包んでくれる父親

のような眼差しを常に与えてくれている

。毎朝、土から生まれるときには、こっ

ちに一回会釈してくれるようになった。

男性が言葉を口に出来るようになったら

、どれほど楽しいのかを考えている。


【2034/05/28 07:19】

文字も書けないみたいで、通じ合えない

と思っていた。このままでは、大きな壁

を越えることは出来ないと考えていた。

でも、ゼスチャーだけでも、男性の心は

分かった。言葉がなくても通じ合えるの

が、本当の絆だ。早朝に家を出ようとし

たら、おじいちゃんに怒られた。男性と

おじいちゃんの間に、何かあることはも

う確実。二人でいるところを見られては

ないが、見られたら大変なことになる。


【2034/05/30 00:01】

その日、抱き締めてくれた男性のカラダ

は、次の日には無くなってしまう。それ

でも、それを私は素直に受け入れてしま

えそうだ。新たなカラダになっても、感

触もぬくもりも、何もかもが一緒なのだ

から。私は、どちらかというと、普通に

近い人生を歩んできた。浮き沈みが少な

く、普通にいい仲間に囲まれて。でも、

それに飽きを感じていたのかもしれない

。だから、男性に惹かれたのだろうか。


【2034/06/01 06:34】

男性に感謝された。私のお陰で、喋れな

かった男性が喋れるようになったみたい

。喋れるようになって何度も言葉を発し

て感謝していた。普通に、今までも喋れ

ていたかのように喋っていた。改造され

る前は喋っていたとはいえ、だいぶ前の

話だろうけど。男性は生活の一部に溶け

込んでいた。何気ない会話が出来る人が

、私の周りにあまりいなかったから。少

しではなく、かなりかなり嬉しかった。


【2034/06/01 08:50】

でも、男性は少々ぶっ飛んだ言葉遣いも

していた。考え方もかなり変だった。文

庫本を耳に当てて喋りながら、歩く人々

を映す携帯電話会社CMが作りたいとか

。自分の顔の写真がプリントされたTシ

ャツを着たギャルモデルをプロデュース

したいとか。私の好きなタイプの妄想を

届けてくれる人だった。ますます興味が

増えていった。こんなに、相性がいいの

なら、私の父親である可能性は高い。


【2034/06/12 10:42】

男性はやはり私の父親だった。私の愛の

力で男性は変わったのだ。元に戻って本

当に嬉しかった。願うことは、とても大

事なことなんだ。突然、普通の人間に近

付いたかのような言動となり、心臓がひ

とつでは足りないと感じた。男性はサラ

ッと父親だと、私に打ち明けて素直に謝

ってくれた。今までは普通ではなかった

一般的な普通に、足を踏み入れた。そし

て、ずっとぬくもりを抱いていた。


【2034/06/13 07:38】

日付が変わる瞬間も、男性とは手を繋ぎ

続けた。0時に息絶えることを受け入れ

てのことだ。怖かったが、男性の近くに

いたかったから。しかし、ずっと父親は

喋り続けていた。日付が変わっても、ず

っと近くで笑っていた。嬉しすぎて、逆

に安心して眠りの中に溶けていった。目

覚めたら、父親はしっかりと横で、手を

握りながら眠っていた。もうキセキと呼

ぶしかないだろう。かなりのキセキだ。


【2034/06/13 09:54】

男性が改造から解放されたことは、奇跡

のなかの奇跡だ。愛が改造を押さえ付け

て、真の人間へと戻ったみたいだ。もう

土のなかに予備の男性はいない。二度と

男性に新しい身体は作られない。昔は一

度死んでも生き返れるので、危険なこと

ばかりしていたらしい。昔は死んでも生

き返れたけど今は違う。だから危険なこ

とには勇気が必要。今は普通の人間だ。

私の普通の父親であり、最高の父親だ。


【2034/06/15 20:05】

最初は男性と出逢わなければ良かったと

思っていた。始めは喋ることも出来ずに

ハグだけだった。警戒を強められても近

づいた。文字も書けなかったけどゼスチ

ャーだけで心が分かった気がした。そし

て喋れるようになり完全な人間になった

。今はもう生き返らない。だから無茶は

やめてほしい。おじいちゃんのことはも

う信じない。これからは、二人で仲良く

暮らす。幸せは、こういうことなんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ