LEVEL g
【2034/05/28 05:55】
男性と接するようになって分かったのだ
が、男性は性格もかなり変わっている。
喋れないのに、何処か積極的な部分が見
え隠れしたり、急に警戒を強めたりする
。でも、私には全てを包んでくれる父親
のような眼差しを常に与えてくれている
。毎朝、土から生まれるときには、こっ
ちに一回会釈してくれるようになった。
男性が言葉を口に出来るようになったら
、どれほど楽しいのかを考えている。
【2034/05/28 07:19】
文字も書けないみたいで、通じ合えない
と思っていた。このままでは、大きな壁
を越えることは出来ないと考えていた。
でも、ゼスチャーだけでも、男性の心は
分かった。言葉がなくても通じ合えるの
が、本当の絆だ。早朝に家を出ようとし
たら、おじいちゃんに怒られた。男性と
おじいちゃんの間に、何かあることはも
う確実。二人でいるところを見られては
ないが、見られたら大変なことになる。
【2034/05/30 00:01】
その日、抱き締めてくれた男性のカラダ
は、次の日には無くなってしまう。それ
でも、それを私は素直に受け入れてしま
えそうだ。新たなカラダになっても、感
触もぬくもりも、何もかもが一緒なのだ
から。私は、どちらかというと、普通に
近い人生を歩んできた。浮き沈みが少な
く、普通にいい仲間に囲まれて。でも、
それに飽きを感じていたのかもしれない
。だから、男性に惹かれたのだろうか。
【2034/06/01 06:34】
男性に感謝された。私のお陰で、喋れな
かった男性が喋れるようになったみたい
。喋れるようになって何度も言葉を発し
て感謝していた。普通に、今までも喋れ
ていたかのように喋っていた。改造され
る前は喋っていたとはいえ、だいぶ前の
話だろうけど。男性は生活の一部に溶け
込んでいた。何気ない会話が出来る人が
、私の周りにあまりいなかったから。少
しではなく、かなりかなり嬉しかった。
【2034/06/01 08:50】
でも、男性は少々ぶっ飛んだ言葉遣いも
していた。考え方もかなり変だった。文
庫本を耳に当てて喋りながら、歩く人々
を映す携帯電話会社CMが作りたいとか
。自分の顔の写真がプリントされたTシ
ャツを着たギャルモデルをプロデュース
したいとか。私の好きなタイプの妄想を
届けてくれる人だった。ますます興味が
増えていった。こんなに、相性がいいの
なら、私の父親である可能性は高い。
【2034/06/12 10:42】
男性はやはり私の父親だった。私の愛の
力で男性は変わったのだ。元に戻って本
当に嬉しかった。願うことは、とても大
事なことなんだ。突然、普通の人間に近
付いたかのような言動となり、心臓がひ
とつでは足りないと感じた。男性はサラ
ッと父親だと、私に打ち明けて素直に謝
ってくれた。今までは普通ではなかった
一般的な普通に、足を踏み入れた。そし
て、ずっとぬくもりを抱いていた。
【2034/06/13 07:38】
日付が変わる瞬間も、男性とは手を繋ぎ
続けた。0時に息絶えることを受け入れ
てのことだ。怖かったが、男性の近くに
いたかったから。しかし、ずっと父親は
喋り続けていた。日付が変わっても、ず
っと近くで笑っていた。嬉しすぎて、逆
に安心して眠りの中に溶けていった。目
覚めたら、父親はしっかりと横で、手を
握りながら眠っていた。もうキセキと呼
ぶしかないだろう。かなりのキセキだ。
【2034/06/13 09:54】
男性が改造から解放されたことは、奇跡
のなかの奇跡だ。愛が改造を押さえ付け
て、真の人間へと戻ったみたいだ。もう
土のなかに予備の男性はいない。二度と
男性に新しい身体は作られない。昔は一
度死んでも生き返れるので、危険なこと
ばかりしていたらしい。昔は死んでも生
き返れたけど今は違う。だから危険なこ
とには勇気が必要。今は普通の人間だ。
私の普通の父親であり、最高の父親だ。
【2034/06/15 20:05】
最初は男性と出逢わなければ良かったと
思っていた。始めは喋ることも出来ずに
ハグだけだった。警戒を強められても近
づいた。文字も書けなかったけどゼスチ
ャーだけで心が分かった気がした。そし
て喋れるようになり完全な人間になった
。今はもう生き返らない。だから無茶は
やめてほしい。おじいちゃんのことはも
う信じない。これからは、二人で仲良く
暮らす。幸せは、こういうことなんだ。