LEVEL f
【2034/05/25 08:35】
男性は窓越しの私の前に突然現れた。い
つもの時間にいつもの雰囲気を纏って。
嬉しすぎで何の考えも思い浮かばなかっ
た。ただの海外旅行でいなくなっただけ
だという噂があった。海外旅行ならまた
会えるよねと、思っているときに男性は
現れた。一番恋しくなってからすぐに現
れてくれて、胸が騒いだ。男性は死んだ
土地でしか生まれないらしい。だから海
外で死んだら海外で生まれるみたいだ。
【2034/05/25 08:57】
どうやら、海外にも特定の場所があるみ
たいだ。私には死んでまた他の肉体で生
き返る、そんな仕組みが理解できない。
全く分からない。中学生の私はそれを理
解できないくせに、好きの感情が溢れて
いる。私にも理解できないほどに広がる
この想い。おじいちゃんは私が聞いてい
ないときも、あの男性の情報を話してく
れるようになった。深い情報から新しい
情報まで。ますます疑問が溢れてきた。
【2034/05/25 17:27】
あの男性と会ってから、色々考えるよう
になっていた。あの男性が私の人生をガ
ラリと変えようとしていた。男性を心か
ら好きと思えるようになってからは、と
ても楽になった。それからというもの、
成績が格段に上がった気がする。最初は
集中出来ず、どうなるかと思っていた。
初めの頃は男性と出逢わなければ良かっ
たとさえ思っていた。でも、今は違う。
逆に脳が柔軟になった気がしている。
【2034/05/25 19:58】
おじいちゃんがパパの不定行為に怒った
から今の状態になってしまった。そう考
えるのが妥当だと思ってしまっていた。
おじいちゃんが行政とか国に関わってい
たと聞いたことがある。国と関わりが昔
あったことで、おじいちゃんが国に依頼
して、男性が今の姿になったのではない
か。そんなことが頭に浮かんできた。あ
の男性よりおじいちゃんの方が怖くなっ
てきた。第一印象はあてにならない。
【2034/05/26 14:24】
男性のことが好きすぎて、まだ授業に完
璧には集中出来ずにいた。やっぱり男性
は不思議で、それでいて少しの親近感ま
で放ってきて、もうおかしくなりそうだ
。男性は身体から電磁波のようなものを
放っている。きっと改造されてしまった
ことと関係していることだろう。ずっと
男性を調べていたが、幾つもの発見があ
った。森の様々な場所に住み処のような
場所がある。そしてカッコよすぎる。
【2034/05/26 18:46】
男性と再度の接触を試みた。幾つもある
住み処のなかでも、一際広そうな洞窟の
ような場所へと来た。前のように逃げた
りせずに、振り向くこともなく、追跡す
る私を受け入れてくれているように感じ
た。洞窟の外から男性を呼ぶと、出てき
てくれた。相変わらずの無口は継続中で
、喋れない身体に変えられてしまったの
ではないかという疑問も、また浮き上が
ってきた。逃げず向かい合ってくれた。
【2034/05/26 20:39】
男性に名前を聞いてみたけど、口を開い
てはくれなかった。でも、しっかりと抱
いてくれた身体は、ずっしりとガッチリ
としていた。もしかしたら、喋ることが
一生出来ないカラダなのかもしれない。
出来るなら会話を交わしたい。そんな願
望が顔を見せた。嫌いから好きになるの
は当たり前だろう。男性は、私のパパで
あるかのように、しっかりと愛情込めて
優しくキツく身体を締め付けてくれた。