幸せのセンサーと不幸のセンサー
『今日は幸せセンサーを3つ下げて、不幸センサーを5つ上げておきますね!』
躁鬱ぎみの私は、毎日精神科医に心の調整をお願いしている。
幸せ過ぎてもいけない。
不幸過ぎてもいけない。
心も中庸が大切だ。
幸せ過ぎると些細な事で不幸を感じ、不幸過ぎると幸せの気持ちに鈍感になる。
私の両脇の下にはツマミがあり、右に回すとセンサーが増幅し左に回すと減退する。
先生はそんな私の、、汗臭く、じと〜と湿っているツマミを回してくれる。
回して、回して、回して、回して、
戻して、戻して、戻して、戻して、
それで私の心の平穏は保たれている。
ある日診察後に忘れ物に気がついた。
慌てて戻り、診察室のドアを開けた。
急いでいたので、ノックもしないでドアを開けてしまって、、、
先生は汗臭く、じと〜と湿った私のツマミを回した指を咥えていた。
軽く笑みの浮かんだ、、恍惚の顔。
私はぽっと赤くなり、ドアを閉めた。
その時から私の幸せセンサーは敏感になった。
1円を拾っては喜び、4時44分の時計を見ては感激した。
幸福感がどんどん加速して私の心を満たしていく。
台風が来ては喜び、事故を見ては喜んだ。
先生は汗で湿ったツマミを左に左に回してくれているが、幸せセンサーが暴走して追いつかない。
回しても回しても回しても回しても
回しても回しても回しても回しても
そしてある日ツマミはポキッと取れてしまった。