㉘ 『果たせなかった約束』
僕は約束をしていた。
そう、自分を救ってくれたあの人と、ジェノさんと約束していたんだ。
決して、今回の依頼のことは他の人には喋らないって。
でも、僕は我慢できなかった。
だって、みんなが言うんだもの。
お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、友達も、友達のお母さんたちも。
『仇を取ってくれた、自警団にしっかりと感謝しないといけないよ』って
違うのに。
僕を救ってくれたのは、自警団の人たちじゃあないのに。
僕を救ってくれたのは、『冒険者』だ。
冒険者のジェノさんなのに……。
我慢をした。約束を守ろうとした。
でも、それでも、許せなかったんだ。
ジェノさんのことを隠して、自分達が怪物を倒したと言っている自警団の人たちのことが、どうしても。
だから、僕はついお爺ちゃんとお婆ちゃんに言ってしまったんだ。
あの怪物を倒したのは、ジェノさんと僕なんだって!
必死に、僕は何度も何度も、本当のことをお爺ちゃんたちに話した。
最初は信じてもらえなかったけれど、何度も言ううちに、次第にお爺ちゃんは難しい顔をし始めて、お婆ちゃんは怒り出してしまった。
……僕は、馬鹿だ……。
この時の僕は、自分のしたことが、ジェノさんに迷惑をかけることになるって分かっていなかった。
本当に、僕は何も分かっていなかったんだ……。




