第4章:命を紡ぐラジオ(前編)
目を開けるとそこは知らない天井。ここは病院。
私は患者。とうに消灯時間は過ぎている。
このままでは日が開けてしまうかもしれない。
眠らなくては行けないのは分かってるが眠りにつけない。昨夜もそうだった。
それで夫からラジオを持ってきてもらっていた。
意を決してラジオを付けイヤホンを耳にする。
そっと目を閉じる。
ゆったりとしたピアノの調べに小鳥のさえずりが心地良いBGMが流れはじめた。
MCは美しく透き通った女性の声でどこか幼さを感じる。
MCはこういった。
>こんばんは、GoodNightの時間です。眠れぬ夜をお過ごしの皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
今夜も皆様からのお便りお待ちしています。
「いま、私のお腹の中にいる、娘に…」
「娘の20歳の誕生日に…会いたい」
私は微かな声でそう呟いた。
>それではお越し頂きましょう。本日のゲストは二十歳になった娘さんです。
…
…ザーザザー
…
ママ?
聞こえる?
瑞々しく優しい若い女性の声。私にもどことなく似ている。声を聞いただけで涙が込み上げてくる。
やっとの思いで言葉を手繰り寄せる。
「香穂…」
「…元気?」
>ママ、元気だよ。
大学生活は順調だし、パパともたまにお山に登りに行ってるし仲良くやってるよ。
頬を涙がつたう。彼女の声を聴いてるだけで溢れ出る
「よかった、元気で、よかった…」
これくらいしか言葉にならない。
>ママ、、、
>ママ私を産んでくれて…
>ありがとう。
彼女も泣いている。
>…私を産むことで…死んじゃったけど…
>それで私もずっと悩んでたけど…
>毎年メッセージ、ありがとう。。。
私は彼女から聴きたい言葉を聞くことが出来た。