第1章:未来と繋がるラジオ
【執筆経緯】SPOONというラジオ配信アプリの配信者「こんぺいとう」さんの声とBGMにインスピレーションを受け執筆した作品です。
是非、SPOONで配信を聴いてみて下さい。
恐怖に怯え慄き眠れない少女がいた。
中学2年生。少女は学校でいじめにあっていた。
暗闇の中、時計の針を眺め続けている。
チクタク、チクタク
針が3時を回ったとき、部屋に置きっばなしにして忘れ去られたラジオが突然動き出した。
ザザザ、ザザー
>...nばんは、ラジオGoodNightの時間です。眠れぬ夜をお過ごしの皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
今夜も皆様からのお便りお待ちしています。
ラジオでなにか番組が流れ始めた。
ゆったりとしたピアノの調べに小鳥のさえずりが心地良いBGMが流れていた。
何故か聞いてるだけで涙が溢れてきた。
枕に頭を突っ伏しながら言った。
「死にたい…」
「希望なんてどこにもないよ…」
なおも涙が込み上げてくる。
>今日のお便りは希望を持てない中学2年の少女。
今に生きる意味を見い出せないそうです。
どうしたのかな?
…何がどうしたのかなよ。心で嘆いた。
ちょうど似たようなシチュエーションのお便りがあったのか。私みたいな人がいるようだ。
「私の未来どうなっちゃうんだろ」
「幸せになれるのかな…」独り言を続ける
>それじゃあ、未来の貴女に聞いてみましょう。何年後がいいかしら
MCは淡々と話を続けている。美しく透き通った女性の声だ。どこか幼さを感じる。ラジオなのに誰に行ってるのだろうか。不思議だが答えていた。
「20年後かな…」
>それではお越し頂きましょう。本日のゲストは20年後の貴女です。
…ザザ、ザザザ
…
…香奈、聞こえる?
…あなたです。20年後の
ハッとした。自分の名前を呼ばれたからだ。この声はお母さん?いやどこか違う。ドッキリ?いじめ?何これ??と頭の中が混乱で渦巻いているのが自分でも分かる。
>香奈、混乱してるよね。
私は20年後の貴女なの。このラジオには不思議な力があるみたいで、時や場所をまたいで話ができるみたいなの。
ラジオを聞ける条件が分からないから、殆ど聞けないんだけどね。
今日は貴女が願ったから未来の貴女と通じたのね。きっと
まだ混乱している。美しいピアノの調べだけはまだ続いている。
>私は貴女だから、通じた理由も分かるわ。いま、、、いじめ…辛いわよね。苦しいわよね。
でも大丈夫。あたなは強いわ。
未来の私は涙を噛み殺している。
>失望することばかりでも、あと少しの辛抱よ。全部は言えないけど希望はある。学校に行く生活を続けていれば必ず貴方にも幸せが訪れる。
未来の私が言うんだもの間違いないでしょ?ふふ
だから、貴女は貴女が信じた道を進んで下さい。私はいまの人生に何も後悔してないわ。
優しく大人になった声。お母さんに似ていて聞いてるだけで落ち着く。
何故か何故なのか今の私の語彙力では説明が出来ないけど、少しだけ勇気が湧いた。
今の私には何もないけど、できることかあるって少しだけ思えた。溢れる涙を拭かず、瞳を閉じた。ピアノの調べが美しい。
ふと気がつくとラジオのMCが話していた。
>今晩のGoodNight、如何でしたでしょうか?
リスナー様に救いが訪れることをお祈りしてます。
頑張る貴女の姿、素敵やわぁ
それでは、いい夢みてね。
おやすみ。。。
おやすみ………
ぉゃすみ…
少し寝坊した。
これまでにないくらい、グッすり寝れた。カーテンの隙間から漏れる朝日が眩しい。
寝坊の罪悪感やいじめ不安感は感じない。あるのは小さな希望の芽だった
この希望の芽を大切に育てようー
未来の私が言うように信じた道を進み、後悔ないように生きよう、そう思って立ち上がった。