2つの魂
『』は実際には声に出していません。
「ん?ここは?......そうかついに来たのか。......この森、すごいな。」
リュウが目覚めた場所は、見渡す限り緑しか無いまさに森林と呼ばれる場所だった。都会で暮らしていたリュウにはとても空気が美味しく感じられた。
しばらくしてリュウは自分の持ち物の確認に入った。
「服はなんかかっこいいな。それと剣にコイン......これはお金かな?」
リュウの服装は丈夫そうなズボンにTシャツ、その上から白と青を基調としたコートを着ていた。持ち物はなんの変哲も無いただの剣と金と銀と銅色のコインだった。
「持ち物はこれぐらいか。まぁ、とりあえずスキルを試すか。まずは.........あそこの木の実に《鑑定》!」
《ラボの実》
「自分を《鑑定》!」
リュウ 人族
所有スキル《再生》《耐性》《鑑定》
「......まぁこんなもんだよな。無いよりかはあった方が全然いいでしょ。あとは、《再生》と《耐性》だけどこれはそのうちでいいや。さて、生涯を共にする魂達とご対面するか。なんだか知らんけど、やり方が分かるようになってるしな。まずは1人目.........」
意識を少し集中させれば会話できるみたいだな。おっ、おそらくこれだな。口に出さなくても、会話できそうだな。
『はじめまして、リュウと申します。』
『あぁ。』
.........おっと向こうは名前を教えてくれないのか。こっちが聞かないと答えないのか。
『...............君の名前は?』
『以前はレオナルドと言う名だった。』
『さっそくだけど、君のスキルを教えてよ。』
『分からない。』
『.........えっ?』
分からない?......そっか生まれたての赤子みたいなものだって女神様言ってたな。これから徐々に思い出していくのか。
『どこまで昔の記憶を覚えてるの?』
『名前と戦い方、それだけだ。』
『戦い方?どんな風に戦うの?』
『素手でもいけるが、武器は全て使えるぞ。』
『魔法は?』
『使い方がわからない。』
マジか......でも戦えるのか。とりあえず、レオナルドの事は置いておくか。次はもう1人の方だ。よし、意識の集中を切り替えて.........
『よう、俺の名前はリュウ。君の名前は?』
『はい、レイクロードと申します。』
『ふむ、レイクロード君は何が出来るのかな?』
『魔法が使えます。いえ、魔法しか使えません。』
『あ、そう』
う〜ん、まぁバランスは良かったかもな。よし、とりあえず獲物を見つけて戦わせてみるか。無理そうだったら俺に戻ればいいし。なんせ俺はほぼ無敵だからな。
それからしばらく獲物と出口を見つけるために森を進んでいた。途中で、湖を見つけふとのぞいてみると銀髪碧眼のイケメンがこちらを見ていた。
「え?ちょっと待って、これ俺?めちゃくちゃイケメンじゃん。」
確か別の器を用意すると女神様は言ってたけど、これは嬉しすぎるな。もう人生勝ち組じゃね?
リュウは気分を良くして活き活きと森を進んでいった。すると奥の方に人影を見つけた。
「ん?もしかして人かな?......ちょっと近づいてみるか。」
その人影に近づいてよく見てみると、ドス黒いフルプレートアーマーを装備した人だった。しかも何やらその人の周りに黒いモヤみたいなものがゆらゆらと体を覆っていた。
「............あれ、絶対マジクソやばいやつだろ。............《鑑定》。」
アンデットナイト〔⁇⁇⁇〕 魔物
所有スキル《⁇⁇⁇》《⁇⁇⁇》《硬化》
何も分かんねぇじゃねーか!いやいや、最初の敵にしてはレベル高すぎんだろ。.........一応、聞いてみるか。
『レオナルド。あいつ倒せる?』
『無力化は簡単に出来る。.........ただ今持っている武器では消滅させる事は難しいな。』
『無力化出来るんだ.........じゃあ、レイクロードは倒せる?』
『簡単にはいかないと思いますが倒せます。しかし、完全に消滅させるとなると少し時間を頂いて集中する必要があります。』
『じゃあ、はじめにレオナルドに無力化してもらってその後レイクロードに消滅してもらおう。』
『分かった。』『了解しました。』
リュウは目の前の敵を見た。正直はじめて見た魔物なので普通がどんな感じなのかは分からないが、目の前の魔物はどう考えても普通ではなかった。とりあえず、レオナルドとレイクロードに任せてみよう、そう思い意識をレオナルドに集中して切り替えた。
「.........ふむ、いつでもいけるぞ。」
レオナルドは少し手を動かしただけで体の感覚が分かったらしく、もう準備が出来たみたいだ。
『いつでもいっていいぞ。あと喋るならこっちで話して貰えるか?』
『了解した。ではいくぞ。』
レオナルドがそう言った瞬間、鈍く大きな音が響いたと思ったらアンデットナイトが地面に頭からめり込んでいた。
『え、何したの?』
『頭を上から地面に向けて殴っただけだが?』
『............マジかよ、強すぎだろ。それとも敵がそうでもなかったのか?』
『まだ、終わってないぞ。』
その瞬間敵が消えたと思ったら、真後ろから大剣で切りかかってきた。レオナルドはそれを持っていた剣でいなしてそのまま敵の両足の膝を蹴って破壊した。そして、敵が前に倒れようとしてるところで相手の大剣を奪い両肩と首を切断してバラバラにした。リュウが気づいた時にはバラバラになった敵が地面に落ちていた。
『.........目が追いつかないわ。.........うおっ、まだ動いてるぞ。』
『あぁ、おそらく放っておくと元に戻るだろう。早いところ消滅した方がいいな。』
『そ、そうだな。レイクロード頼むぞ。』
『お任せを。』
そのままレイクロードに切り替わった。レイクロードはすぐに何か集中しはじめた。すると敵を中心として地面が発光しはじめた。そのまま1分ほどすると、光っていた地面から光の柱が出てきてその光を浴びた敵は粉々になりながら最後には跡形も無くなった。
『お待たせしました。完全に消滅しました。』
『あ、あぁご苦労様。.........なんかあっさりしてんね。』
俺は倒せないと思うけど、思ったより苦戦しなかったな。もしかして、俺が思ってるよりこの世界の戦闘のレベルが高いのか?それとも魔物があんなんばっかりなのか?とりあえず、まだこっちの世界に来たばっかりだ。いろいろと知らない事の方が多いしこれからだな。
リュウはとりあえず考えることをやめて森の出口を探すことにした。
しばらくして森から出ることができた。森から出てしばらく歩くと街道がありそのまま沿って歩くと、街が見えてきた。その頃には日が落ちはじめてオレンジ色の夕日が見えていた。
街の門に着くと門番が声をかけてきた。
「すみません、失礼ですが貴族の方でしょうか?」
「え、いえ違いますよ。」
「なんだ、風貌がどっかの貴族の坊っちゃんみたいだったから勘違いしたよ。」
「格好がですか?」
「身なりもだけど、髪とかちゃんと手入れされてそうだったからな。」
「まぁ身だしなみには気を使ってるので......ところで街に入りたいんですけど。」
「おう、了解。君、身分証とか持ってる?」
「すみません、実は身分証を無くしてしまって......無いと入れませんかね?」
「いや、ちょっと確認するだけだよ。指名手配中の賞金首かもしれないからね。多分大丈夫だと思うけどちょっと待ってて。」
そう言って門番は詰所に入っていき、しばらく待ってすぐに戻ってきた。
「大丈夫みたいだね。君みたいな見た目の賞金首はいなかったから通っていいよ。ようこそ、国と国を繋ぐ街ラファリエへ。」
「ありがとうございます。」
そう言って、この世界に来て最初の街に入っていった。