選んだスキル
「ん?ここどこだ?」
おかしいな、さっきまで外にいたのに。ていうかなんだ、真っ暗で何も見えないじゃないか。
「ここは、魂の空間ですよ。」
「ファッ⁉︎誰だ⁉︎」
急に話しかけられたので変な声を出してしまった。声の方を向くと白髪巨乳の美女がいた。
「驚かせてすみません、神崎 龍さん。私は転生の女神です。」
「お、おう」
やべぇよなんだよ急に、転生の女神?これってまさか…例のあれじゃないか?
「龍さん、あなたは命を失い転生する魂として選ばれました。」
「てて、転生?いいい、異世界ですか?」
「えぇ、そうです。」
「うぉっしゃ!おらぁ!」
嬉しすぎて大声出してしまったぜ。ん?でもなんでだ?てか、命を失った?
「え?俺死んだんですか?」
「えぇ、あなたが待っていた後ろでビルの工事がおこなわれていました。その工事の途中で足を滑らせた工事員の持っていたハンマーが、ものすごい回転数で落ちていきあなたの頭に直撃しました。」
「え、やば。運悪すぎでしょ。」
「でも、周りの人達は必死で声をかけていましたよ。」
あぁ〜なるほどね。イヤホンしてて聞こえなかったわ。
「まぁそんな事より、なんで俺が選ばれたんですか?他の人にはない何か特別なものでもあるとか?」
「そんな事で済ますのですね…、いえ、あなたが選ばれたのは完全にランダムです。」
「あ…そうですか…」
「あなたに行ってもらう世界にはあなた以外にも地球の方がいますよ。今は10人もいませんけど。」
「ふ、ふ〜ん…」
なんだ……いや異世界に行ける事自体は嬉しいけどな、ちょっと妄想と違ったんだよ。ほらね、自分だけ特別とか考えちゃうじゃん?まぁそうだよな、俺が行くんだから他にも行ってる奴はいるか。
「あ、それと今から行く世界って剣と魔法のファンタジー的な世界ですよね?」
「そうですよ。」
よっしゃ、流石にここら辺は大丈夫だったか。
「記憶とか無くなるんですか?赤ちゃんからとか?」
「いえ、記憶も年齢もそのままですよ。」
「経験値とかレベルとかステータスとかあります?」
「経験値もレベルという概念は存在していません。けれどステータス、スキルは存在します。」
「ふむふむ」
「あの…もうよろしいですか?後は行ってから確かめてください。」
「あ、はい」
転生の女神も忙しいのかな?てか俺も早く行きたくなってきたからいいけど。
「それでは、転生する準備を始めます。まずあなたには好きな最上級スキルを2つ授けます。その後に、強くはありませんが2つスキルを選んでもらうか、オプションを選んでもらいます。」
「スキル貰えるんですね。」
「えぇ、今からお渡しする紙に選べるスキルが表示されます。はじめはあなた達で言うチートスキルを表示させています。」
受け取った紙を見てみると、いくつかスキル名が表示されていた。
「剣術、体術、鑑定、召喚術………なんか、意外と普通なんですね。」
正直、思ってたよりも全然弱そう。てか、普通にみんな持ってそう。
「重要なのは名前ではなく内容ですよ。好きなスキル名を触ってみて下さい。」
そう言われて剣術を触って見ると、
スキル名 《剣術》
〔神から与えられたスキル。剣の扱いに関しては人の限界を軽く凌駕した才能が発揮される。〕
「すげぇ、もしかしてスキルって持ってるだけですごいんですか?」
「いえ、そうではないのです。まぁ見てもらった方が早いですね。」
そう言って女神様が紙に手をかざすと、スキルが浮かび上がってきた。
スキル名 《剣術》
〔剣の才能がある。〕
「え?あ、そういうことか。内容が重要ってこの事ですね?」
「そういう事です。神から与えられたスキルと記載があると最上級のスキルになります。あと、同じ内容のスキルを持っていても実力が全く同じということではありません。同じ剣術でも戦い方などで強くもなれますし、弱くもなれます。スキルが勝手に剣を持って動いてくれる訳では無いのです。……分かりやすく言うと、剣術は相手の剣の太刀筋などがよく見えるようになりますがそれを剣で対応するか、または体を使って避けるかはあなた次第なのです。」
「なるほど、戦略とか戦い方は自分で考えないとダメなのか。」
別に剣を持った瞬間、体が勝手に動くって訳じゃないのか。ただ立ってるだけだと相手に斬られちゃうのか。……いやまぁ普通に考えてそうか。
「まぁそれはスキルを使ってみないとなんとも言えないですね。このスキル選び時間かけていいですか?」
「えぇ、大丈夫です。その中からだと全て最上級なので2つしか選べません。」
そのことを聞いて俺はスキルを1つずつゆっくりと見ていった。最上級のスキルはそんなに多くはないため時間もあまりかからなかった。そして、俺はこの2つを選んだ。
スキル名 《再生》
〔神から与えられたスキル。どのような傷も瞬時の内に再生する。体の7割がなくならない限り、脳や心臓も再生する。〕
スキル名 《耐性》
〔神から与えられたスキル。自身が受けた様々な攻撃が威力半減する。また、あらゆる耐性を持ち状態異常を全て無効化する。〕
ふっふっふっ、これでまず死ぬ可能性が極めて少なくなるだろう。せっかく異世界に行けるんだ、死ぬわけにはいかない。
「とりあえず、2つ選びましたけどこの後はどうすればいいんですか?」
「あとは、弱くはなりますがまたその紙に表示されるスキルを2つ選ぶか、オプションを2つ選んで下さい。」
すると、紙に表示されていたスキル名が増えていた。先程と同じスキル名の内容を見てみると確かに弱くなっていた。そしてオプションが追加されていた。
「えっと、武具、アイテムそれにお金……いろいろありますね。武器の性能も結構良さそうだな。あとは………主人公補正?なにトラブルにでも巻き込まれるの?」
オプションをじっくり見ていくと気になるものを見つけた。
「ん?この《別の魂との切り替えが可能》ってなんですか?」
「それですか……毎回聞かれますが、それを選んだ人はいませんね。それは、自分以外の魂を体に取り込みその魂に行動してもらうことが出来るというものです。」
「ちょっと難しいけど、要するにやりたくない事を自分の体だけど別の人にして貰えるって事?」
「えぇ、その魂はあなたの命令を守り従順になります。ただ、自我もありますので考えて行動も出来ます。なので自分で意識して切り替えられる多重人格みたいなものです。」
「ん〜なんかそれだけだと微妙ですね。」
「詳しく説明しますね。切り替わった際にその魂の持っているスキルと魔力量がそのまま自身の体に反映されます。ただし、あなたが持っている再生などは切り替わった際に別の魂には反映されません。」
「え、つまりスキルと魔力量は魂が切り替わったら全く別のものになるって事ですか?」
「はい、そうです。そして切り替われる魂はこれから決定致します。以後、その魂とずっと死ぬまで一緒になります。2つ取り込む事は可能ですが、完全にランダムになります。」
「3つの魂を状況によって上手く切り替えて行動出来るんですね。でもランダムかぁ…...つまり全く使えない魂が選ばれる事もあるんですよね?」
「そうですが、選ばれる魂はあなたにこれから行ってもらう世界で激しい戦争がおこなわれていた時代の戦死した魂です。その時代には優秀なスキルを持つ者が多くいましたよ。最も、戦死したからと言って強い魂かどうかは分かりませんが......」
完全な博打ってこと?う〜ん、確かに自分で弱いスキルを選ぶよりその魂の強いスキルを期待した方がいいのかも。動くのは自分じゃなくても命令できるし従順っていうしな。てか、早く異世界行きたい。
「もう、それでいいや。女神様お願い。」
「本当にいいんですか?あなたの言う事を聞くとは言っても別の人が自分の中にいることになるんですよ?」
「別に自分人格が変わったり、その魂が勝手に出てくるって事は無いんでしょ?命令出来るならなんでもやって貰えるし。」
「まぁ別にいいですが.........あ、あと1つ選べますよ?」
「え?じゃあこの《鑑定》で。」
スキル名 《鑑定》
〔相手の名前、種族、スキル名を読み取ることが出来る。対象物の名前を読み取ることが出来る。〕
元々、これは欲しいと思ってたしね。ではいざゆかん。
「あ、すみません。魂を3つも持つとなると今のあなたの体では器が足りないので、あなたの魂と残りの2つの魂を別の体に移して転生をしてもよろしいですか?」
「うぇ?なんかよくわかりませんがいいですよ。どうでも。」
「分かりました。こちらで用意した器に入ってもらいます。それと共通言語が理解できるようになってますので安心してください。そして、最後にあなたとこれから生涯を共にする魂ですが、はじめは生まれたての赤子のようなものです。その魂はあなたと共に昔の記憶、出来ることを思い出していきます。あなたとの関わり次第でその魂は成長していきます。ですので、決して無下に扱ったりせず、共に成長していってください。では、あなたが素晴らしい人生を送れる事を心から祈っております。いってらっしゃい。」
うぉ、女神様の笑顔はじめて見れた。なんか対応がそっけなかった気がしたけどやっぱ美人っていいな。
そんな事を思いながら龍は意識が遠くなっていった。
「行った?」
「えぇ、もう行きましたよ。あなたの手違いで死なせてしまった事もなにも言ってませんよ。」
「もう、反省してるって。それに喜んでたじゃない。スキルもあげたし。」
「それとこれとは別でしょう......本当は死ぬ事も転生する事もない人なんですよ。本来は転生する人間は特別な力があるというのに。」
「でも嘘ついてたじゃない。転生する人間は完全にランダムだって。」
「それはあなたがつかせた嘘でしょう。それにあの人以外の人は特別な力がないとは言ってないです。」
「うわぁ、ずるぅい。」
「だから、元はと言えば「分かった、分かったからあたしが悪かったから。もう終わったことだしいいでしょう?」...............はぁ」
あの人は、龍さんはあの世界でどう生きるのでしょうか?たまには様子を見てみましょうか。