だからふる
この作品は、自分のブログ「人間万事最高が今」 http://kakerado.blog.fc2.com にも掲載しています。
あたしは嫌われている。
暗くて、サムい子だからって、みんなに疎まれている。
早くいなくなればいいのにって思われている。
あたしは四人姉妹の末っ子だ。
あたたかな笑顔が優しい一番上の姉、
明るくて元気で人気者の二番目の姉、
穏やかでクールな美人の三番目の姉。
あたしだけがジメジメと根暗で、あたしが近づくとみんな襟を立て目をそらして下を向き、せかせかと足早に去っていく。
動物たちですら、あたしが来るや否や身を隠す。
たくさんの人に囲まれ、幸せそうにしている姉たち。
どうしてあたしだけが。
たまに、訳知り顔で慰めてくれる人たちはいる。
「あなたがいるから、お姉さんたちはみんなに好かれるんだよ」
なんだよ、それ。あたしは単なる当て馬かよ。
まれに、わかった風に近づいてくる人たちもいる。
「私たちはあなたが好きだよ」
違うね。あなたたちが好きなのは、あたしじゃなくて、あたしがいるときにたまたま近くにあるモノや、偶然居合わせたイベントだ。
あたしそのものを好きなわけじゃ、ない。
誰にも好かれないのはつらいよ。
誰か、あたしを、あたし自身を好きになってよ。
あたしそのものを大事にしてよ。
あたしなんて、いっそいなくなればいいのにと。
自分でもそう思っている。
みんなもそう思っている。
でもね、わかってほしい。
あたしだって、あたしなんかいなくなればいいと思っていること。
あたしは自分が存在してもいいと思って存在しているわけではないこと。
せめて、せめて。
いなくなることもできず、また来やがったって思われて。
ぬけぬけと、ずうずうしく、性懲りもなく姿を見せやがってと陰口を叩かれて。
でもせめて。
あたし自身が、あたしという存在を許しているわけではないこと、それはわかってほしい。
それだけはわかってほしくて、あたしは身を縮め、冷たく足早に通り過ぎようと努める。
ああ、でもだめなのだ。
また、みんなの前に姿を表してしまう。
何度でも、何度でも。
そしてさらなる自己嫌悪。
そうやって、いつもどおり、すみっこで脚を抱えて時が過ぎることだけを祈って座っていたら、さっと地面に影が差した。
「おまえ見てると、すっげえイライラする」
少年はあたしに言う。
「昔の自分見てるみたいで」
――誰に好かれる必要もないんだ。
少年はそう言って、あたしの腕を掴んだ。
あたしの名は冬。
少年の名前は雨。
そしてあたしたちは決めた。
この世界を白銀に染めてやる。
復讐だ。