2機目『カンナミ』
やっぱり二足歩行の直立型だ。
ハーリンテン少年はそう、一人で勝手に納得していた。それはあまりにも大きく、少年の小さな身体を見下ろしていた。
現代に蘇った『巨人』。
どしりと垂直に伸びる足には、三本の発達したカギ爪が大地をがっちり掴んでいる。
胴体は極端に短い。足の付け根から、手の付け根まで、ほとんど距離が離れていなかった。
操演槽は、カンナミの頭とでもいうべきてっぺんだ。
カンナミは服を着ていた。トカゲやサカナの鱗のように、金属の板が縫い付けられている装甲服だ。その服によって、カンナミを支えるスライム筋肉が隠されている。スライム筋肉は物理的に高い耐久性があっても、火や電気には弱いのだ。守ってあげる必要がある。
手には小手をはめ、足にもすね当てがある。
「うわっ! やっぱり大きいなぁ」
カンナミのふるう武器も展示されていた。
どれもニンゲンには規格外の──あたりまえの話ではあるが──大きなものばかりだ。
剣や槍に盾。
弓に投石紐。
ニンゲンが使うひととおりのものがありそうだ。
そんな中で、ハーリンテンは変わった武器を見つけた。
形は、草刈に使う大鎌だ。
大鎌は、腰を使って棒先の鎌の刃を左右に振りながら草を刈り取る。
ハーリンテンの村でもよく見かけた道具だ。
しかしカンナミが草刈などするのだろうか?
「少年。それは対人用大鎌だ」
ひょっこりとハーリンテンの隣にあらわれたのは、サカミ・コタツ老人だ。
「対人用大鎌て何ですか?」
「字のとおりだよ。この大鎌をカンナミが振りかぶって、草のかわりにニンゲンを刈り取るんだ。身長差がありすぎて、剣や槍では、あまり対歩兵戦にはむいていなかったんだ」
ハーリンテンは想像した。
カンナミがこの、対人用大鎌をふるう姿を。
盾や剣をかまえた兵士。
薙がれる対人用大鎌。
巨大なぶんだけ重いそれは、ニンゲンなんて吹き飛ばしてしまうだろう。
「質量があるから、鎧ごと胴体を斬り飛ばしたなんて報告もある」
「……恐ろしい装備ですね」
「ソルブルク国の、この手の兵器が『殲滅機』と呼ばれる由来になったくらいだからな」
殲滅機。
なるほど。
カンナミは庭の草よりも多くの、兵士を狩っているようだ。
「ただ怖い話ばかりではない。カンナミの二足二手の形は、汎用性──何でもできるようしするためだ」
「汎用性ですか?」
「うむ。少年はその手で色々なものを持てるだろう?」
「うん」
「それと同じことだ。カンナミは戦闘以外、むしろそれらにこそ注力したからこの形なのだ。重たいものを運んだり持ち上げたり、道の整備にも使われる。だからこそ、カンナミ最優の装備はクワとツルハシである、といわれることもあるくらいだ」
「これはソルブルク国系ロボットの根幹なのだ」とコタツは話した。
戦闘特化であるならば、何も人型とする必要はないのだ。
敵を打ち倒して国土を守ることは、確かに大切なことだ。だがそれと同じくらい、国力の発展は大切なのだ。土地を耕し、道を作り、橋を架ける。
ハーリンテンはその話を聞いて、もう一度、カンナミを見た。
怖い、しかし縁の下で支えてくれる存在。
どこか、頑固なオヤジ、といったものをカンナミに感じる少年であった。




