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 神も納得の手腕。

 それは簡単だ。

 指紋を関係各所に送りつける。

 それが一番だ。

 神は『調べろ』と言ったが、引っかけ問題だ。

 調べるだけでは不十分だ。


『神様に悪意なんてありませんよ』


 うっさい!

 絶対に引っかけ問題だ。

 全知全能が事件のことを知らないはずがない。

 事件を解決するために俺に調べさせたに違いない。

 神は俺を試している。

 俺が善良か否かを試している。

 つまり事件を解決する努力をしたかどうかだ。

 言われたとおり調べて終わりなわけがない。

 答えは『解決できる人間に調べさせる』だ!

 どうだまいったか!

 一生童貞なんて嫌だからな!

 嫌だからな!


『光ちゃん……そこまで猜疑心全開で神様に挑まなくても……』


 俺はコンビニに行き、採った指紋の裏に黒の紙を貼り付けたものを拡大コピーする。

 鑑定技術がない以上、俺のや吉村の指紋も混じっている可能瀬は否定できない。

 だから一カ所に十枚ほどコピーする。

 原本は警察に送るつもりだ。

 家に帰ると、コピーした指紋を封筒に入れ、パソコンで作成した手紙を同封する。

 いたずらと思われないように住所、氏名、携帯番号、メールアドレスをちゃんと書き、しかも名前は手書きにする。

 中学生なので『拝啓』とか『敬具』は省略。

 あまりきちんとしすぎてもよくない。




テレビXX 『未解決事件を追え!』係担当様


私は東京都XX区立XX中学校一年五組相良光太郎と言います。

最近、私の中学校に転校生が来ました。

彼女は海老名さんと名乗っています。

ところが彼女は北条利香子さんにそっくりなのです。

生き写しと言ってもいいほどです。

まだ仲良くはなっていないため写真の入手はできませんでしたが、指紋と髪の毛を採取しました。

(指紋の原本と髪の毛は警視庁の情報提供窓口に郵送しました)

よろしくお願いいたします。


相良光太郎




 この程度でいいだろう。

 これをテレビ局に、番組名などを変えたものを別のテレビ局へ。

 さらに文面を変えて新聞社にも送る。

 ほとんどは握りつぶされるだろう。

 中身すら確認せずに捨てられるかもしれない。

 あまり期待はできない。

 本丸は警察だ。

 警察には髪の毛と指紋の原本を送る。

 本気度を示すために写真付き生徒手帳のコピーも同封する。

 これだけやってダメなら、違う手を考えるしかない。

 さすがにネットを使って晒し者にするのは申し訳ない。

 それは最終手段にしたい。

 さらに、母親のにも娘の無事を知らせてやりたかったので、かつて所属していたプロダクションにも髪の毛の半分と指紋のコピーを送る。

 契約違反での解雇ではないので現在の住所や電話番号を把握しているかもしれない。

 これはあくまで俺の会わせてやりたいという願望だ。

 ただの自己満足である。



『光ちゃんって、結構手段を選びませんよね……』


 ふふふ。なんとでも言え。

 なにせ俺は暗号名(コードネーム)ファルコン……


『なんでそれにこだわってるんですか!』


 男の浪漫を理解しないヤツめ。

 男の子はこういうの好きなの!

 俺はいくつも封筒を用意し、郵便局に向かう。

 事故を防ぐために配達記録郵便にしたかったが、そういうわけにもいかない。

 なにせ、あとで経費で落ちるとは言っても用意できる現金には限りがある。

 それも中学生のお小遣いだ。

 あたい、とうとう体を……


『それ以上えっちなこと言ったら神様に言いつけますからね。まったく女の子が聞いてるんですよ!』


 わかったよー。ちょっとした冗談じゃない。もう!

 結局、俺はテレビ局の分は普通郵便で、警察に送る分は配達記録郵便にした。

 少ない所持金から金を出し、郵便局を後にする。

 ……経費くれないと犯罪に手を染めますので。


『もう! わかりました!』


 それじゃあ帰りますか。

 と、そのとき遠くに人影が見えた。

 まずい!

 俺はゴ●ゴのような緊急回避で路地に逃げ込む。


『な、なんですか!?』


 おっぱいだ。


『とうとう、えっちが脳に回りましたか?』


 天使ちゃん今日もイヤミがキレッキレっすね。

 そうじゃなくて、あの胸は北条だ。


『えっと……あんな遠くからおっぱいで人を判別した……のですか?』


 そうですが何か?

 中学生であのサイズだぞ!

 どうしたって中学生男子としては心がときめくだろ?


『神様ぁー。天罰のオーダーお願いしまーす』


 ちょっとぉー! らめ! らめええええええっ!

 と、俺が抗議をすると頭の中で「ぴろりん♪」と音が鳴った。


『スキル解放 おっぱいマイスター』


 おー……

 それは天使ちゃんとは違う電子音のようなアナウンスだった。


『さいってい……』


 すかさず天使ちゃんが言った。

 ですよねー。

 よし、スキル確認だ。


 名前  : 相良光太郎

 ヨミ  : サガラコウタロウ

 AGE : 13

 職業  : 中学生(天使)

 所属  : 合気道部

 LV  : 33

 HP  : 200

 MP  : 250

 STR : 200

 INT : 178

 DEF : 270

 AGI : 152

 DEX : 680

 LUK : 28000



 スキル :


 学力  : LV35

 格闘  : LV25

 物理攻撃: LV20

 物理防御: LV20

 魔法  : LV380

 おっぱい: LV1


 バッドステータス:


 童貞、裸族、おっぱい星人、ドM、童貞特有の猜疑心


 備考 :


 天使

 残りスキルポイント 780



 どうやらスキルは4文字制限があるようだ。

 略して『おっぱい』になってやがる。


『……頭痛くなってきました』


 どんまい♪

 それじゃせっかくだからステータスをもう一度。

 ほらよっと!




 名前  : 相良光太郎

 ヨミ  : サガラコウタロウ

 AGE : 13

 職業  : 中学生(天使)

 所属  : 合気道部

 LV  : 33

 HP  : 200

 MP  : 250

 STR : 200

 INT : 178

 DEF : 270

 AGI : 152

 DEX : 680

 LUK : 28000



 スキル :


 学力  : LV35

 格闘  : LV25

 物理攻撃: LV20

 物理防御: LV20

 魔法  : LV380

 おっぱい: LV11


 バッドステータス:


 童貞、裸族、おっぱい星人、ドM、童貞特有の猜疑心


 備考 :


 天使

 残りスキルポイント 770




『さりげなく「おっぱい」のレベル上げたよこの人!』


 いやなんか記念で。

 スマホでスクリーンショット撮りたい気分。

 じゃ、ねえよ! 北条が来ている。

 よく考えたら、なぜ隠れた!

 堂々と挨拶すればよかったのに。

 くそ! 負い目が多少あったせいで隠れてしまった!


『光ちゃんってアウトロー気取ってるけど基本繊細ですよね』


 うっさい!

 俺は息を殺した。

 まるで人形のように整った顔。

 とてつもない美少女が通り過ぎる。


 通り過ぎたのを確認すると俺は息を吐いた。

 ばれなかった……


『なんとか見つからずにすみましたね』


 なに言ってるんだよ。

 今なら尾行できるぞ!


『尾行?』


 おう。

 家の場所を調べておくぞ。


『す……』


 おっと、ストーカーとか言ったら今日はエロサイトパーティな。

 おまえが泣くまでネットの海に散らばるエロ動画を見続けてやる!


『ぐぬぬ。言いませんよ、そんなこと』


 嘘つき天使に一泡吹かせた俺は北条を尾行する。

 十分に距離を取りつつ見失わないように。

 しばらく歩くと北条は走り出した。


 やべ、バレた。


 と思ったがそれは違った。

 スーツを着たサラリーマン風の男の方へ走っていく。

 そして男の持っていた何か……たぶんスーパーの袋を受け取る。

 仲のいい親子に見えた。

 そしてここから俺の本当の試練が始まったのだ。

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