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指紋採取2

 俺は声をかけようとしている北条のステータスを確認した。



 名前  : 北条美沙緒

 ヨミ  : ホウジョウミサオ

 AGE : XX

 職業  : XXXX

 所属  : XXXX

 HP  : XXXX

 MP  : XXXX

 STR : XXXX

 INT : XXXX

 DEF : XXXX

 AGI : XXXX

 DEX : XXXX

 LUK : XXXX



 やはりステータスは表示されない。

 なぜ誘拐されたはずの北条が普通に学校に通っているのか?

 なぜ年齢からスキルに至るまで非表示なのか?

 それを考えていた俺はゴルゴのような表情をしていた。

 そんな俺をヘッドロックしたまま吉村は笑う。


「あはは、海老名さん。ごめん」


 そして吉村はごまかすように俺を解放。

 俺はわざとらしく倒れた。

 だが吉村は非情だ。

 追い打ちで俺のケツにキック。

 あん♪

 この声は表には出さない。


「ぎゃああああああ!」


 俺はわざとらしい悲鳴を上げると「びくん! びくん!」と痙攣する。


「その動きやめろ!」


 すると北条……今は海老名がクスクスと笑った。


「もう、やだぁ、仲良しなんだねー」


 ウケた俺は調子に乗る。


「ほれ婆さんや、海老名さんが笑っておるぞい。更衣室に連れて行ってくだされ」


「はいはい爺さん。一生そこで寝てろ! 行こう海老名さん」


 そう言うと吉村は北条、海老名を連れて行く。

 まあひどい。

 仲間はずれなんてされたら、光ちゃん泣いちゃうんだから!


『さっき蹴られて喜んでましたよね』


 そんな昔のことなんて知らないな!

 女子がいなくなると俺は準備運動をする。

 準備体操が終わると俺はさらにストレッチをする。

 顔を膝にぺたんこ。

 上半身を戻して、お股ぱかー。

 お胸を床にぺたりんこ。

 するりんこ、ずるりんこ。肘でちょっと前に進む。

 股間ぺたーん。お腹もぺたーん。

 俺はそのまま床にアゴをつける。


 秘技『土の字』


『相変わらず体柔らかいですね……』


 ふふふ。俺は暗号名(コードネーム)ファルコン。

 宇宙を駆けるさくらんぼだ。


『それはもういいですから』


 ストレッチが終わると次は膝行だ。

 膝で歩く歩法である。

 古武術特有の動きだ。

 片膝を立てる。それを前に倒す。体が前に進む。体を回して逆の膝で同じことをする。

 はっきり言ってつらい。

 だが俺はドM!

 よく調教されたドMだ!

 もちろん速度を上げる。

 カーブでドリフト、きききき。


『だからどうしてそこで壊れるんですか! せっかくかっこよかったのに!』


 しゅごーい!

 なぜか、ふくらはぎと腹筋が悲鳴をあげちゃううううううううう!

 脇腹がぷるぷるしてりゅー! んほッ!

 心でダブルピースしながらマットの上を二週ほどしていると、女子二人がやってくる。

 北条こと海老名はジャージだ。

 まあ胸倉を掴む、胸捕りじゃなきゃ問題ないだろう。

 それにしても、女子のきゃっはうふふっていいよね♪


「光太郎、準備運動終わったの?」


「うん。あとは顧問が来るまで受け身かな」


 人生全て受け身。

 人生のサンドバッグ、それが光ちゃん。

 俺は不幸だああああああああッ!


『なんでこんな人がモテるんでしょうね?』


 モテたことなどない。

 だって童貞だもの。

 バレンタインのチョコだってもらったことないし。

 小学校の時に『ちょうだい♪』って言ったら『バカ死ね』て顔真っ赤にした女子全員に言われたし……

 う、うぐ、うぐううう。いじめだ……


『フラグに気づいてないとか……どれだけバカなんですか……』


 どういう意味だ?


『教えてあげません』


 ヒドス!

 俺は受け身をする。

 半身から後ろ足を畳むのがベーシック。

 丁寧に畳んで行けばノーダメージ。

 床を手で叩く。床を叩く意味は諸説あってわからない。

 寝たまま足を入れ替えて起き上がる。

 今度は逆サイド。


「光太郎、ホントに私たちと同じで初めて一年なの?」


「まあね」


 30回ほどやったら、今度は前回り受け身。

 なにげに体をぐにゃんってした方が痛くない。

 これは数回。

 練習できるスペースが小さいからな。

 そしたら今度は後方回転受身。でんぐり返しの凄い奴。

 ぐにゃぐにゃ、ぐるりんこぐるりんこ。

 終わった……

 さて女子を舐めるような視線で視姦しよう。

 じゃなくて指紋を採る隙をうかがおう。胸と尻を中心に。


『さいてい……』


 ぐはは! 聞こえんなー!?


「じゃあ海老名さん一緒に受け身やろうか」


 海老名が吉村に受け身を教える(吉村が海老名に受け身を教える?)。

 キャッハウフフフ。

 やはり吉村は薄い。


『……』


 黙るな。

 不安になるだろが。

 俺が不安になってると声がする。


「受け身終わったかー?」


 顧問の飯田がやって来た。

 声はどこまでも緩い。

 試合がない部活のせいかこんなもんだ。


「んじゃ、吉村は光太郎で片手捕り四方投げの練習。えっと……」


「海老名さんです」


「海老名は俺が手のはずし方から教える」


「せんせー、光太郎でって聞こえたんですが?」


「おう、光太郎だけ腕を上げすぎてる。バランスを取るために光太郎はひたすら受け身。ちゃんと飛べよ」


 『飛べ』とは飛び受け身をしろという事だ。

 技がかかる直前に自分から飛ぶ。

 なぜこんなことをするのか?

 いろいろ理由はあるが、主な理由は二点。

 間接を極めながら投げる技が多いため、上級者同士でスピードが上がると危険性が増す。

 小さいパーツから大きなパーツまで驚くほど簡単に外れる。

 だからクリティカルなダメージを避ける技術が発達している。

 もう一つは見栄えがいい。達人ごっこができる。

 楽しければいいじゃない。試合ないもの。

 合気道を知らない人にはデモンストレーションが魔法に見えるのはこの技術のせいだ。

 だが、この場合は問題がある。


「下は薄いマットですが?」


 単純に痛い。


「飛べ。先生は信じている……お前ならできると」


 ガッデム!

 ふざけんな!

 だが残念なことに顧問の飯田の言うことは理不尽ではなかった。

 確かに痛いが俺には難しくない。

 多少おえっとするだけだ。

 なにせ俺は訓練されたドMだからな!

 みんな死ねばいいのに!


『部活ってたいへんですね……』


 おう! わかってくれるやつがいて嬉しいぜ!

 俺は吉村の手をつかむ。

 セクハラではない。

 そういう技だ。

 吉村は俺の手首をつかみ、前に進む。

 同時にひねりながら折りたたむ。

 実はこの技はちゃんと効かせるのが難しい。

 メカニズムが複雑なのだ。

 しかも吉村は技の理解度が低く、悪意なく関節を折りに来る。

 だから俺はその時点で飛ぶ。

 パーンと音をさせながら俺は一回転して倒れる。

 着地部分の太ももが痛い。

 吉村は「やったぜ」という顔をしている。

 謎の接待プレイ。男の子はつらいよ。

 神様……ち●ち●股間にはさんで収納したら、女の子扱いしてくれますか?

 あたい、今日から光子。


『NGだそうです』


 いちいち聞くな!

 次は逆サイド。

 またもや飛び受け身。

 びたーん。

 痛い。

 俺はただ投げられているわけではない。

 起き上がる直前、ラッキースケベのチャンスをうかがって……じゃなくて、北条の指紋を採るチャンスを狙っていた。

 北条は技の前に受け身を教わっている。

 まずはでんぐり返しの練習だ。

 ……良いケツだ。

 だが一瞬、北条と目が合ってしまった。

 まずい!

 俺は北条に笑顔を向ける。

 「がんばってー!」という顔で白い歯を見せてきらーん!

 ふう、ケツをガン見してたのがバレずにすんだ。

 じゃなくて隙をうかがっていたのがバレずにすんだ。

 俺は視線を戻す。

 すると吉村は目が鋭くなっていた。

 なに……かな?


「おりゃっ!」


 吉村は倒れてる俺の背中に容赦なくキック。そのままぐりぐり。

 あん♪ らめ……らめえ!


『ホント、バカですね』


「練習……続けよう……な?」


 天使と吉村、二人に叱られる。

 迫力があるのは気のせいだろう。

 吉村に至っては、なぜか「ぼきりぼきり」と指を鳴らしている。

 つか天使!

 お前はダメだ!

 貴様に怒る権利はない!

 俺がミッション中なの知ってるだろ!


『うっさいです』


 次の瞬間、まるで二人が手を結んでいるかのように俺のケツに吉村キックが命中。

 いいツッコミだぜ、よくぞここまで成長してくれた。


「ひどいよ……吉村さん……」


 俺は『よよよ』と泣く。

 もちろん道着ははだけ肩を見せる。

 あ、俺のピンク乳首見ますか?


『さいってい!』


 天使は文句を言うが吉村には効果抜群だった。


「ば、ばっかじゃないの!」


 うへへへー顔真っ赤!

 だが、これ以上からかうと本性がバレる。

 だから俺は素早く道着を直して、立ち上がって吉村の手を取る。

 そしてスマイル。


「吉村さん。許してくれてありがとう」


 別に許してないし、感謝するいわれはないが一応感謝しておく。


「あう、あう、あう」


 吉村は顔を真っ赤にした。

 俺の勝ちー!


 一見すると遊んでいるように見えるが、俺は必死だった。

 休み時間に開始する。

 俺は指紋採集(採取?)という勝利を確信していた。

無駄パートに見えますが後半へのフラグ含んだ部分です。

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