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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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『悪』の目覚め

 クジ●ックス先生の漫画に出てきそうなバンの中。

 穴戸の家に行くその道中で俺は登記情報を見ることのできるサイトにアクセスする。

 本当だったら警察が調べる仕事だ。

 きっと今も調べているだろう。

 だが警察からの情報の横流しよりも早く俺は情報を得る必要があった。

 穴戸たちの関係性を補強したかったのだ。

 穴戸たちは共犯関係にある。

 だが一人は確実にバカだ。

 こいつをゲームの理論で考える。

 武藤レベルのバカが一人いる場合、バカが自供することによって犯罪集団が崩壊する。

 捕まった後も罪のなすりつけ合いをして全員に重罰が下る。

 この場合の正解は『口裏を合わせる』なのだが、武藤にはそれができないだろう。

 凶悪犯罪にこそ協力プレイと人間力が必要なのだ。

 それが嫌だったらソロプレイに徹するべきだ。

 武藤には無理だけどな!

 だがこの場合の疑問点は『協力プレイができないはずの武藤がなぜ他に二人に協力しているのか?』だ

 その答えが記録に残されているはずだ。


「お兄ちゃんなにしてるんですか?」


 美香が聞いてきた。


「登記情報を見る」


 俺はIDとパスワードを入力し、あらかじめ用意していた武藤の家の登記情報を見る。

 所有権の移転の項目があり、原因は相続だった。

 つまり両親は死んだと。

 次に俺はその他の権利を探す。

 やはり抵当権が設定されていた(・・)

 わりと最近設定されたやつな。

 武藤はバカだから家業で借金でも作ったのだろう。

 さらに別の所……たぶんあやしい金貸しから金を借りてその夫婦を殺害。

 金に困っていたはずだ。

 だが最近消滅している。

 なるほどねえ。


「なんか難しいことしてますけど……これでなにがわかるんですか?」


「ここに抵当権ってあるじゃん。これって土地を担保に金を借りてるってこと。それで下に抹消の記録があるだろ? こいつは借金を返して担保じゃなくなったって事だ。つまりな、武藤は金に困って何人も殺してるのに急に借金が返済できた……おかしいだろ?」


 おそらくこの日付より前に三人殺したのだろう。

 美香は口を開けて驚いている。

 今まさに兄の偉大さ。

 素晴らしさを噛みしめているに違いない。

 俺の名前を言っ(略)

 ところが美香は言った。


「いえ、そのおかしさよりお兄ちゃんがこの意味不明な表を読めることに驚いているんですが……」


「はい?」


 確かに難しい。

 登記簿は罠だらけだ。

 記載されていても信用はできない。

 民法や登記法を考えながら読まねばならない。

 だがそれでも俺は読める!


「そりゃさあ、この間買ってきた妹パラダイス7月号に決まっているだろ。特集は『登記を読めるグレイトなお兄ちゃん特集』だ!」


 えっへん! どうよ!

 美香は頭を抱えた。

 なにその態度。


「あの……お兄ちゃん……落ち着いて聞いてくださいね。妹パラダイス7月号はえっちなビデオ……妹バスツアーの特集です」


「……はい?」


 俺は知らねえぞ。そんな特集。

 俺は目を点にした。


「だから落ち着いて聞いてくださいね。あのエロ本にそんなコーナーなんてない!」


 美香の顔は本気と書いてマジだった。

 おい……ちょっと待って。

 やめろ……やめてくれ……

 マジやめて!

 俺は慌てて取り繕う。


「い、いや、あのね。問題を解くとグラビアがダウンロードできるのよ。すごいのよ……」


 吉村は『アホだ……』という顔をしていた。

 だが話を半分も理解してないだろう。

 北条はよくわからないらしくわかったフリをしている。

 するとテレビ局の人が言った。


「あら、登記なんて大学レベルですよねえ」


 俺はここで完全に理解した。

 ガッデム!

 ガッデム!

 ガッデム!

 正しい意味でホーリーシットだ!

 騙された! 神様に騙された!

 時計も、登記も、全て神様の陰謀じゃねえか!

 画像のためだけに俺がどれだけの時間を費やしたかわかるか!

 エロ画像だけが楽しみで法律書を読んだこの苦痛がわかるか!

 てめえふざけんな!

 神様殴らせろ!

 絶対に殴らせろ!

 ぶっ殺す!


「美香ちゃん。神様ってどう殺せばいいの?」


 俺は光りを失った黒目で言った。


「お兄ちゃん。怖いからメイクして付け睫毛つけた顔でレ●プ目やめてください」


「女の子がレ●プ言うな!」


 俺はわざと声を上げた。

 もうね! らめ!


「お兄ちゃん! それが言いたかっただけですよね!」


 美香が言いやがった。

 まあそうなんですけどね。

 すると北条が俺の肩を叩く。


「私はいつでもOK♪」


 北条は親指を上げていた。


「テレビカメラの前でスキャンダル量産するな!」


 俺は必死になった。

 もうね、ダメだこの娘。

 誰かが止めてあげないと。

 俺は女性アナウンサーを見る。

 するとツボに入ったのか笑っている。


「ひー! 苦しい! クールビューティで売り出してるのに……北条ちゃん面白すぎる!」


 そりゃそうだ。

 普通はこれが本性だって知らないよな。

 顔も美人系だし、不幸な少女役が多いし。

 だから俺はおずおずと言った。


「あの……テレビには……」


 北条のキャリアは守りたい。

 断ったら速攻でカメラを破壊するつもりだ。


「あ、大丈夫ですよ。スキャンダルは育てるもの。飲酒するとか、タバコを吸うとか、ホテルにお泊まりでもしない限りは出せませんよ」


 ひどすぎる言い草である。

 ホント、世の中ってクソだな!


「ね、大丈夫でしょ」


 北条は親指を立てる。

 もうね、お父さん心配で死にそうよ。

 それにしても神は……神の野郎は俺の持て余し気味の性欲につけ込んで知識を詰め込んで来やがったのだ!

 くそ、こんな手に! こんなしょうもない手に引っかかるとは……相良光太郎一生の不覚!


「それでお兄ちゃん。なにかつかめましたか?」


 美香が聞いた。

 アナウンサーの人もメモを取り出す。

 うっわ、これは失敗できん。


「おうよ。おそらく武藤の借金を返してやったのは穴戸だ。でも不動産関係なんて年齢的に用意できる額じゃないだろ? つまりだ……穴戸の親も知ってる。穴戸たちがなにをやったのかをな。つまりだ……地方議会の議員だから行政もグル……とまでは言わないが、知ってて握りつぶしたんだろうな」


 アナウンサーがゴクリとつばを飲んだ。


「推測ですけどね。それで穴戸が10年前の事件を暴露しようとしたタケルさんを殺させた。だっておかしいだろ? 武藤は今さら傷つくような経歴じゃない。発覚してもとぼけていれば証明しようがない。いや武藤は賢くないから嘘を吹き込まれたのかもな。それで隠蔽のために金を渡した」


 今まで黙っていた吉村が言った。


「なぜ……タケルさんは真実を語ろうと思ったの? 成功をつかむ直前だったんじゃないの?」


 俺は仄暗い笑みを浮かべた。

 ようやく真相が言える。


「そりゃさ、穴戸か武藤か……誰かが脅したんだろうな。頭の悪さからして武藤だろうな。だからタケルさんは傍観者のフリ……いや実際傍観者だったんだろうな。それで全員を告発して全てを終わらせようとした。もうそれしかタケルさんには手がなかった。正義の告発者のフリをするつもりだったんだよ」


 そもそも正義のためにってのが気にくわなかった。

 そうだ。

 奴らを破綻させたのは武藤だ。

 武藤のせいで穴戸も菊池もタケルさんを殺さざるを得なかった。

 そして悪いことは重なる。

 菊池も殺人の快楽に目覚めたのだ。

 どいつもこいつも最悪だ。

 じゃあ……穴戸は?

 穴戸はどうするつもりだ?

 いや違う。考え方が間違っている。

 穴戸はどんな『悪』に目覚めたんだ?

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