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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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『猛獣』相良光太郎は踊る。

 警察の責任者が来た。

 背広のため階級章とかはわからない。

 ブランドのダブルのスーツを着ているが、その腕には古い高級腕時計をつけている。

 ダイヤとか金とかではないエントリーモデルなので15万から20万円くらいだろう。

 若い頃に買ったのを今でも使っているのかもしれない。

 年齢的には妥当な格好だと思う。

 30歳くらいの背広姿の警官も一緒にいる。

 刑事なのだろうか?

 こちらは飾りのない日本製の電波式腕時計。

 価格は1万円前後だ。

 ソーラーでないのは安定性を重視しているからだろう。

 実用性重視だ。

 ちなみにこの知識は『妹パラダイス6月号 モテお兄ちゃんファッション入門』の記事がソースである。

 彼らはアイドルのコスチュームでウィッグを取った俺を見て、指をさしてゲタゲタと笑う。

 過呼吸になって笑うその姿は完全にツボに入ったのだろう。

 偉い方の人は壁を叩いている。

 ムカついた俺はメンチを切る。


「いやごめん。でも、あまりにも似合って、ヒーッ! ホント、ゴメン、ヒーッヒッヒッヒ!」


 もう一人は手を叩いた。

 俺の中の警察への信頼度が下がった。


「あの『猛獣』相良光太郎がこんなにかわいいなんて! 似合いすぎ、ブフッ!」


 俺はむすっとしていた。


「いや、この秘密は墓場まで持っていくから。安心してくれ。いや、こんなに笑ったのは久しぶりだ」


 偉い方の人は顔を真っ赤にして、しかも涙目だ。

 殴りたい。その笑顔。

 俺はソファの上であぐらをかく。

 スカートなので思いっきりぱんつが見えている。

 だがファウルカップの上からエグい角度のサポーター二枚重ね。

 さらにその上から見せる用のぱんつという重装備なので俺の破壊兵器は外目にはわからない。


「あのぱんつが……」


 偉い方の警官が言った。


「それがなにか?」


 俺は視線で殺す。


「いえすいません」


 なにを謝っているのか本人もわかってないはずだ。

 本当に俺は猛獣の目つきをしていた。

 と、遊んでいる暇はない。

 俺は笑っている連中を無視して話した。


「武藤浩一19歳。解体業。逮捕歴あり。借金取りと他二人を殺害。遺棄してのうのうと暮らしてやがる。それが客席にいる」


 途端に二人の顔つきが変わった。


「ちょっと待て、それはどういう……」


「菊池龍一。大学生。この間の児童絞殺事件の犯人だ。この二人、それともう一人はタケルさんと10年前に鈴木千穂ちゃんを殺した犯人だ」


「証拠はあるのか……?」


「ない。独自の情報網によるタレコミだ。だけど去年俺の言葉を聞かなかったせいで罪のない人々が何人も死んだ。その後警察の幹部や政権がどうなったかは知っているよね」


 俺はふんぞり返った。

 態度は悪いが圧力をかけるためだ。


「すぐに逮捕しろとは言わない。逮捕状の請求に時間がかかるだろうし、片方はアホだが片方は賢そうだ。弁護士を呼ばれたら厄介だろ?」


 二人はため息をついた。

 そして俺の顔を見た。


「光太郎くんはどうするのかな?」


 猫なで声だ。

 面倒な相手だと思ったのだろう。


「二人が暴れないようにステージで護衛をする。ここに来ている警官にも注意するように言ってください」


「暴れたら逮捕できるんじゃ?」


「怪我人を出したくない」


 俺はハッキリと言った。

 これで俺のミッションは終わった。

 二人の殺人鬼を殴るのはリスクが高い。

 それに殺人犯は人の法で裁くべきだろ?

 前回みたいに人を殺しながら俺に指令を下しているわけではない。

 あくまで前回の件は例外なのだ。

 神様の指令?

 うるせえ!

 文句があるなら神様自身がやりゃいいだろ!

 俺に頼んだからには俺のルールに従え!


 ……とにかくこれで終わったのだ。

 そう俺は確信していた。

 あとはこの国の優秀な警官がきっと事件を解決してくれるに違いないのだ。


「それじゃ、俺は持ち場に戻ります」


 俺はウィッグを被った。

 今度は笑いも起こらない。

 警官たちはそれぞれ無言で携帯電話を取りだした。

 それぞれ別の上司に報告するのだろう。

 あとは神様のネットワークの力に任せるしかない。

 俺は警官たちを尻目にまたバックステージに戻った。

 メンバーが並んでいる。

 俺はまた北条の後ろで踊ろうと隅っこに行った。

 すると北条はなぜか俺の腕を取って真ん中に寄せる。

 え? なに?


「HIKARUちゃん。……伝説を作ろう♪」


 その目は興奮していた。

 顔も赤く呼吸も荒い。

 おおおおおおおーい!


「あのね……私……」


 なに?

 なんなのー!


「HIKARUちゃんが踊っているのを見てからなにかおかしいの……はあはあはあはあ。ママも好きにヤっていいって……」


 は、発情してらっしゃる……

 カタカナで『ヤ』はやめてください。

 それはステージに関して現場判断を尊重するという意味であって、俺を押し倒していいという許可じゃねえからな!

 俺は美香と吉村を見た。

 二人とも淀んだ目で親指で首をカッ切るジェスチャーをしている。

 ら、らめ!

 暴力らめええええええッ!

 俺のドMとしての心は期待に満ちあふれた。

 って……そうじゃねえよ!

 俺は保身を図ることにした。


「伝説を作ろう!」


 俺は行った。

 そう俺は超特急に乗っていた。

 しかも片道切符。もう戻れない。

 俺たちは手を繋ぎながらステージに出る。

 もうやけくそだ!


「大きなお兄ちゃんたち! ジークおっぱい!」


 しゅばーん!

 仕掛け花火に点火した。

 絶妙なタイミングである。


「「おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!」」


 永遠の中学生。心の童貞を失っていない同志たちが俺に声援を送る。

 清廉潔白に生きてこられた方々はこれを見苦しいと思うかもしれない。

 でも断言する。

 男はおっぱいが好きです。

 ごっつぁんです!

 北条は俺と手を繋いでノリノリで喜んでいる。

 美香と吉村はジト目で俺を見ていた。

 皆川は慌てて胸を腕で隠している。

 皆川のことまで考えてなかった。……ごめんね。


「バカだ……数百人のバカがいる……」


 美香の声が聞こえたような気がしたが、俺は気にしなかった。

 そう、今日の俺は機嫌が良かった。

 おっぱいだけで二時間盛り上がることができるくらいに。

 なにせ皆川も遠藤さんも俺も怪我をせずに勝利を収めたのだ。

 ……って思うだろ?

 やっぱり神様の指令には意味があった。

 それを俺が思い知るのはすぐ先のことなのである。

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