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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す!

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最悪の一夜 4

 俺は息を吐いて気を落ち着かせた。

 そしてワイヤーを刺激しないように匍匐前進で部屋の中央に進む。

 犯人は何をするのも執拗だ。

 神経質で緻密なのに、まるで獣のように攻撃的だ。

 まさかこの程度でどうかなるようなヘマはしてないだろう。

 飯田たち教師が外のネット中継者に怒鳴っているのが聞こえる。


「そこの君! 隣の家から板になるものを借りてきてくれ!」


 二人にはなにか考えがあるのだろう。

 面白ければなんでもいい彼らは喜んで手を貸してくれるだろう。

 そこら辺はテレビや新聞よりは協力的だ。

 俺の代わりに全部やってくれればいいなあ。

 そう思いながら俺はアルミホイルをスマートホンで照らす。

 頭があると思わしきところに空気穴があるのが見えた。


「生きてる!」


 俺は叫ぶとさらによく見た。

 アルミホイルは電気が流れる。

 リード線なんかがあったら、破ったら途端に爆発……なんていうシナリオもあるかもしれない。

 でもそれっぽいものはない。

 さすがに装置が複雑になるので、そこまではしないかも。

 俺は警察を呼ぶか、このままアルミホイルを破るかを迷った。

 俺の目的はあくまで吉村の救出だ。

 中のなにかが死んでしまうのが失敗条件なのだ。

 俺は一息ついて周りを確かめた。

 すると部屋の奥に不自然に置かれているアナログ時計を見つけた。

 俺は時計を照らす。

 秒針が動いている。

 銀色の針はあと5分ほどの所を指していた。

 それよりも恐ろしいのは口紅で『制限時間』と書かれていた事だ。


『光ちゃん! どうするんですか?』


 わからん。

 マジでわからん。

 あと5分で爆弾処理班って来てくれるかな?


『む、無理かも……』


 ですよね。

 ……よし破ろう。

 俺はアルミホイルを破る事にした。

 おそらく電磁波人命探査装置、電波で人がいないかを調べる装置の邪魔するための措置じゃないだろうかと……思う。

 すまん吉村!

 怪我したら俺が嫁に貰ってやる!

 吉村じゃなかったら死んでも責任取らないけどごめんね。


『偉そうですね……』


 声に出してないので、この失言にはツッコミをご容赦願えますか?

 いやマジで。

 天使のツッコミが功を奏し、俺は冷静になった。

 ゆっくりアルミホイルを剥がす。

 中からは予想通り吉村の顔が出てきた。

 吉村は瞳孔を開いたまま涙を流していた。

 口にはビニールテープをされている。


「吉村、生きてるか!?」


 俺が声をかけると、吉村の目が動いた。

 生きてる!

 俺は吉村の口に貼られたテープを取る。

 さらに噛まされていたワタを取る。


「吉村!」


 俺が呼ぶと吉村は息を吸い、そして泣き始めた。


「相良……怖かったよぉ……」


 服が脱がされたような感じはない。

 俺は少しだけ安心した。

 だが次の瞬間だった。

 安堵した吉村の目に飛び込んできたのは、俺の上半身を埋め尽くす卑猥な書き込み。

 乳首には二重丸に縦線、点々がついた卑猥な落書きがされていた。

 それを見た吉村は顔を真っ赤にした。


『変態!』


 天使が吉村の代わりに言った。

 お前さあ、こうなった経緯を全て見てたよな?


『つい代弁したくなりました』


 だがこの変態アートは吉村を日常に戻したらしい。

 吉村は笑顔になった。


「そちらも大変だったんだね」


「まあな。でも今助けてやるから」


 俺はそう言うと大声で叫んだ。


「先生! 吉村は生きてる! 外の連中に助けを呼んでもらってくれ!」


 俺が叫ぶと、先生たちが現れる。

 その手にはテーブルが握られていた。

 ……なんすか?


「えーっと、先生。あと5……3分で爆発しそうです」


 俺はとりあえずスルーした。


「そうか相良。下がれ」


「いや警察は間に合いませんよ」


「わかってる」


「じゃあ爆弾を解除しましょう」


 仕方ない。

 爆弾解除はわからんがパズルゲームだと思って気合で……


「吉村を救うぞ。なあ豪田先生」


「ええ」


 ちょっとお前ら。

 なにたくらんでいやがる。


「報道によると犯人はリチウムイオン電池を爆発させている。警察に仕掛けていたのもそいつだ」


 スマートホンのバッテリーだ。


「つまり家一軒吹っ飛ばすような爆弾は入手できない」


「……なぜ断言できるんですか」


「危険物の入手には免許も知識も要る。保管にも知識が必要だ。簡単にはできないし、そんな技術を持っていたらすぐに身元が判明している」


 そうなのか?

 本当にそうなのか?


「そして、警察の足止めに使われたのは釘だ。バッテリーの爆発とともに釘が飛んでくるんだ。ネット情報だがな」


 痛そうだ。

 しかもソースがネットである。

 不安極まりない。


「痛いが死なない。つまりそう言うことだ」


 おい、あんたら……変なスイッチ入ってませんか。


「腕が鳴りますな」


 ねえ、なんなの?


「リチウムイオン電池は爆発まで時間が掛かる。お前は吉村を起こして外まで逃げろ」


「先生たちは?」


「こいつで防御しながら後退する」


 そう言うと飯田は天井をどこかで借りてきた懐中電灯で照らす。

 俺の携帯じゃ光が届かなかった場所だ。


「あれだ」


 飯田は指をさす。

 そこには小さい箱があった。

 俺は吉村に巻かれているアルミホイルを剥がす。

 吉村には爆弾は仕掛けられていなかった。

 俺はため息をつく。


「これを使え」


 飯田が俺に包丁を渡した。

 白いセラミックの包丁だ。

 包丁?


「いやすぐに出るのがそれしかなかったんだって」


 こういうのが好きな家らしい。

 俺は吉村の手足を縛っていたテープを包丁で切る。

 吉村はそれでも身を縮めていた。

 俺は包丁を放り捨てる。


「よし引っ張るぞ! なあに安心しろ。最悪死ぬだけだ。みんな一緒だから寂しくないぞ」


 飯田が不謹慎な冗談を言った。

 笑えない。本気で笑えない。

 確かにガソリンとかを使ったトラップはなさそうだ。

 猶予はあと1分だった。

 飯田と豪田がテーブルを構える。


「相良、逃げろ!」


 俺は言われたとおり吉村を抱きかかえて走った。

 たった数歩、数秒の出来事だ。

 飯田たちも俺を守りながら後退した。

 俺たちが外に出た瞬間、天井や壁に仕掛けれた爆弾が「ぱんっ!」という音を立てて爆発した。

 飯田の言葉は当っていた。

 犯人は高度な爆薬は持っていない。

 だが嫌がらせとしては酷いものだった。

 釘やパチンコ玉が教師二人に襲いかかる。

 二人ともテーブルで防御していたが隙間から釘が入り込む。


「「痛てえええええええええ!」」


 飯田も豪田も叫び声を上げた。

 白煙の中から二人が出てくる。

 それは酷い姿だった。

 飯田の頭には釘が刺ささっていた。

 頭蓋骨は大丈夫だろうか?

 よく見ると靴にも釘が刺さっている。


「……生まれてから一番痛え」


 飯田がつぶやいた。

 倒れるほどのダメージではなかったらしい。

 完全に嫌がらせだ。

 だが見た目は血だらけで痛々しい。


「まあ、膝の腱を切った時よりはマシかと。いてて……」


 豪田が静かに言った。

 豪田のケツには釘が刺さっている。

 血で赤く染まった白ブリーフが見えている。

 上下のジャージも破けまくっている。

 俺だったら泣いていると思う。

 二人とも血まみれだ。

 だがそれは勝利者の表情だった。


「いいか相良ぁ。大人ってのは、たとえ死にそうでも平気な顔をするもんだ」


 俺はドン引きだ。

 大人になりたくない理由ができた。

 俺はやせ我慢をする二人のステータスを見るだけの根性はなかった。

 この二人の勇姿はネットで実況され、全世界で数百万人が見ていたらしい。

 これはコ●ンドーが放映されるたびにコラが作られるネットの伝説になるのだが、おれはまだそれを知らない。


 そして俺は確信した。

 犯人は吉村を殺す気はなかった。

 ただ俺をいたぶりたかったのだ。

 でもどうして?

 なぜこんな無駄な事をしたのだ?

 それがわからない。

 俺は思わず吉村を抱き寄せる。

 吉村も俺にしがみついた。

 サイレンが聞こえる。


『終わりましたね……』


 そうだな。

 もう俺たちにできる事はない。

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