LV、それは全く信用できない数値
あれから天使との会話もなにもかもが復活した。
ステータスも普通に表示される。
よし、恒例の俺のステータスちゃんから。
名前 : 相良光太郎
ヨミ : サガラコウタロウ
AGE : 13
職業 : 中学生(天使)
所属 : 合気道部
LV : 34
HP : 207
MP : 255
STR : 202
INT : 191
DEF : 274
AGI : 153
DEX : 681
LUK : 37000
スキル :
学力 : LV35
格闘 : LV25
物理攻撃: LV20
物理防御: LV20
魔法 : LV380
おっぱい: LV11
バッドステータス:
童貞、裸族、おっぱい星人、ドM、童貞特有の猜疑心、ビビリ、貧乳教徒
備考 :
天使
残りスキルポイント 1070
杉浦と込山の恋を成就させたことによってスキルポイントが振り込まれている。
よしポイントを振ろう。
名前 : 相良光太郎
ヨミ : サガラコウタロウ
AGE : 13
職業 : 中学生(脳筋天使)
所属 : 合気道部
LV : 34
HP : 207
MP : 255
STR : 202
INT : 191
DEF : 274
AGI : 153
DEX : 681
LUK : 37000
スキル :
学力 : LV85
格闘 : LV435
物理攻撃: LV200
物理防御: LV200
魔法 : LV380
おっぱい: LV61
バッドステータス:
童貞、裸族、おっぱい星人、ドM、童貞特有の猜疑心、ビビリ、貧乳教徒
備考 :
天使
残りスキルポイント 200
『……なんで物理と格闘に全力で振ってるんですか』
そりゃお前……悪魔が怖いからだ!
『怖いのを認めちゃうあたりが光ちゃんらしいですね』
悪魔が怖くてなにが悪い!
あれから警察が動いた形跡がまるでないんだぞ!
『あれだけやって動かないってのが恐ろしいですね……』
そう、俺は困っていた。
なにせ北条の事件は暗礁に乗り上げ、かと言って近づくのは危険。
天使の正体を探るにも取っ掛かりがまったくない。
どうしろってのよ?
天使ちゃん! 神様はなにか言ってる?
『なにも……いえ……光ちゃんには正直にお話しします。お言葉を聞くことができなくなりました』
……マジで?
『マジです』
ど、どうすんのよ?
『手持ちの情報でどうにかしろってことかと……』
こういうのは過去にもあった。
例えば俺のステータスにある『魔法』。
中二病全開の攻撃魔法や不死身の回復魔法が使えるようになると思って初めてもらったポイントを全て魔法に振ってしまった。
だが今の俺には超常現状を操るようなことはできない。
使い方を天使ちゃんを通して神様に何度も尋ねたが返事が返ってきたことはない。
『自分で考えろ』もしくは『時が来たらわかる』ということだろう。
マニュアル無いって某有名中学の入試かよ!
国立大学の二次試験の小論文か!
ざっけんなー!
『だから、「ポイントはわかるものだけに振った方がいいですよ」って言ったじゃないですか』
……天使ちゃん。君は間違っている。
魔法は男の子の浪漫なのだよ。夢なのだよ。
この閉塞した世界を生きていこうという気になる希望なのだよ。
『……もうちょっと現実を見ましょうよ』
やだ。
『……』
……黙るな。
天使が黙ったので俺も教師に意識を向ける。
俺たちが恒例のケンカをしているのは教室。
クソつまらない保健体育の授業中だった。
子どもの作り方はまだですか?
あまりにもつまらないため俺はクラスメイトのステータスをのぞき見る。
……杉浦以外は全員バッドステータス『童貞』持ち。
よかった。まだ俺は取り残されてない。
『……な、なんて醜い男の子どうしのマウンティング』
うっさい!
男の子は繊細なの!
女子の方の表記はなくて良かったと思う。
そんなものがあったら明日からどう接していいかわからない。
そう言えば教師は見てなかった。
大人のステータスは人生が垣間見えるから嫌なのだ。
名前 : 豪田達夫
ヨミ : ゴウダタツオ
AGE : 38
職業 : 教師
所属 : 柔道部
LV : 48
HP : 480
MP : 0
STR : 352
INT : 440
DEF : 700
AGI : 124
DEX : 78
LUK : 37
スキル :
学力 : LV80
物理防御: LV40
少年愛 : LV98025
体育教育: LV200
寝技 : LV750
バッドステータス:
愛、外付けハードディスクの中のブツ
備考 :
相良光太郎をひそかに狙っている
現在の敵は吉村春香
おいいいいいいいいいいいいッ!
ちょっと待て!
オイコラ!!
スキルの『寝技』が地味に怖いわ!
『光ちゃん……どんなことがあっても私たち友だちですよ』
ちょッ! 天使ちゃん!
ら、らめ!
諦めるのはらめぇッ!
俺はガクブルする。
そ、そうだ。
ステータス能力がバグを起こしてるんだ。
そうに違いない。
そ、そうだ。
北条のステータスだ。
あれを見たからおかしくなったんだ。
そうに違いない。
俺はガクブルしながら北条のステータスを開く。
すると頭の中に電子音とアナウンスが響く。
『魔法が解禁されました。MPを使ってステータス(強)及び、リアルタイムのステータス表示が使用できます』
どういうこと?
俺が首をひねると北条のステータスが表示される。
名前 : なし (北条美沙緒)
ヨミ : ナシ (ホウジョウミサオ)
AGE : 13
職業 : 奴隷
所属 : なし
LV : 26
HP : 75 / 125
MP : 0 / 0
STR : 56
INT : 126
DEF : 56
AGI : 47
DEX : 35
LUK : 38
スキル :
学力 : LV25
殺人知識: LV260
解体知識: LV300
演技 : LV80
バッドステータス:
終わらない地獄、名前喪失、栄養失調
備考 :
自分の名前を思い出せない
それは衝撃的だった。
俺も天使も思わず黙ってしまうほどのインパクトだった。
口の中は乾き、なんだか気持ちが悪くなる。
胃が重い。
俺は静かに手を上げる。
「先生、気分が悪いんでトイレ行ってきていいですか」
「ああ……どうした相良。先生が保健室連れて行ってやるか」
いつもならここでツッコミの一つも入れるところだが、そんな気はさらさら起きなかった。
いつもうるさい天使も無言だ。
「いえ……授業を続けてください」
「あ、ああ、わかった。もしつらかったら保健室に行けよ」
「はい」
吉村が俺に声をかけようとしたが、俺は笑顔を作って「いいよ」と手を振った。
そしてそのままトイレに行き、個室のドアを閉めてからズボンを下ろさずに蓋を閉めたままの便器に座った。
作戦会議だ。
どうするよ……?
『あの……光ちゃん。ごめんなさい……さっきから頭が痛くて……』
大丈夫なのか?
『わかりません。でも……痛い』
どうやら天使も風邪を引くらしい。
そっとしてやりたいところだが……
うるさくしてごめんね。
『いえ、そのくらいは大丈夫です。えっちな妄想じゃなければ……』
今日は自重します。
マジで自重します。
『こう……もやもやするんです。何かを思い出せそうというか』
思い出す。
……せめてお前のことを調べる手がかりがあればいいんだけどな。
『なにか思い出したら一緒にネットで調べてくれますか?』
約束する。
『ありがとう』
こいつたまに可愛いんだよなあ……
俺は事件を整理する。
北条美沙緒が学校に通いながらも犯人から逃げ出せない理由がわかった。
北条美沙緒は当時三歳。
事件前のことを思い出せないのは仕方がない。
俺だって三歳の頃なんて断片的にしか思い出せない。
……いや、まだあるのかも。
どうすればいい?
どうすれば助けられる?
悪魔と戦う?
勝てる気がしない。
実は防御力のテストは実施済みだ。
画鋲が俺の体に刺さるかどうかのテストだ。
試しにLV20になったときに画鋲を踏んでみたのだ。興味本位で。
結果は普通に刺さった。痛かった。
なんという紙装甲! 物理防御LV20でもこの程度!
LV200でも期待はできまい。
包丁でも殺される自信がある。
じゃあどうするか?
殺人鬼といえども警察には勝てないはずだ。
いっそ連れ去って警察にかけこむ。
いやダメだ。
逮捕されるのは俺だ。
勝てる自信があっても乗り込んでボコボコってのも無理だろう。
そ、そうだ!
豪田先生をけしかけて……って勝てる気がしない。
これは却下。
どうすればいい……俺は無理難題の本当の難易度に気づいたのだ。
だが、やるしかねえ。
職業奴隷なんて許してはいけない。
直接……話すしかないのか……