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俺の頭の中には天使がいる。しかもうるさい。

 名前  : 杉田 一樹

 ヨミ  : スギタ イツキ

 AGE : 14

 職業  : 中学生

 所属  : 野球部

 LV  : 34

 HP  : 108

 MP  : 38

 STR : 132

 INT : 30

 DEF : 58

 AGI : 156

 DEX : 69

 LUK : 70



 スキル :


 野球  : LV40

 学力  : LV3

 尻バット: LV10



 バッドステータス :


 童貞



 備考


 込山良子 コミヤマリョウコ へ恋をしている。




 ……このステータスを設定したやつ。

 ちょっと体育館裏で話し合おう。サシで。

 童貞がバッドステータスとか誰が決めた!

 なあコラ!


 ……いきなり話が脱線したようだ。

 話を元に戻そう。

 このステータスは『俺』のクラスメイトの野球部員、杉田のものだ。

 備考欄にあるように杉田は委員長の込山に恋をしている。

 俺はすぐに込山のステータスを確認する。




 名前  : 込山良子

 ヨミ  : コミヤマリョウコ

 AGE : 14

 職業  : 中学生

 所属  : 委員長

 LV  : 33

 HP  : 48

 MP  : 200

 STR : 25

 INT : 150

 DEF : 20

 AGI : 30

 DEX : 123

 LUK : 200



 スキル :


 眼鏡  : LV508

 学力  : LV30

 美術  : LV38

 妄想  : LV99

 BL  : LV1024

 視姦  : LV5000

 美少年 : LV20000


 バッドステータス :


 腐女子


 備考 :


 美少年のキャッハウフフを見るとMP回復

 杉田と誰をカップリングするか模索中




 ……ん?

 オイコラ……

 俺は考えていた。

 かなり高い確率で委員長は腐女子だ。

 それも中学生が持っていたら怒られる程度じゃすまない物件をお持ちに違いない。

 人の弱みを使うのは気が引ける。

 俺は悩んだ。

 そこはいつもの中学校の教室。

 俺は相良光太郎(さがらこうたろう)

 ごく普通の中学生だ。

 ……正確に言うと人のステータスを見ることのできる中学生だ。

 これに関してはあとで詳しく話そう。

 さてさてと、挨拶代わりに俺のステータスを確認しよう。




 名前  : 相良光太郎

 ヨミ  : サガラコウタロウ

 AGE : 13

 職業  : 中学生(天使)

 所属  : 合気道部

 LV  : 33

 HP  : 200

 MP  : 250

 STR : 200

 INT : 178

 DEF : 270

 AGI : 152

 DEX : 680

 LUK : 28000



 スキル :


 学力  : LV35

 格闘  : LV25

 物理攻撃: LV20

 物理防御: LV20

 魔法  : LV380


 バッドステータス:


 童貞、裸族、おっぱい星人、ドM、童貞特有の猜疑心


 備考 :


 天使

 残りスキルポイント 780



 ……バッドステータスのことで相談がある。

 話し合おう……考えたやつ出て来い!

 体育館裏に来やがれ!

 だいたいなんだ!

 『天使』って。わけわからんわ!


 そう、俺が『天使』になったのは中二になったばかりの数ヶ月前、四月のことだった。

 それは荒ぶるトラックでも通り魔でもない。

 勇敢さを見せつけるイベントでもなかった。

 なんてことはない。

 その発端は四月という季節外れの、それも首都圏では珍しい大雪だった。

 なにせ豪雪地帯とは違い勝手がわからない。

 だから、なにもせずに雪が降るままにしていた。

 次の日に屋根に積もった雪が落ちてくるなんて知らなかったのだ。

 その日の積雪は新潟クラスの80センチ。

 しかも関東のぼた雪だ。固まること固まること。

 それが中学に向かおうとした俺の頭に降り注いだ。

 ずっぽりと雪に埋まる拙者。

 雪だるまのできあがり。

 息ができないでゴザル。

 寒いでゴザル!

 童貞で……死にたくないで……ゴザル……ぽくぽくぽくちーん♪


 雪で死ぬ。


 それは首都圏では現実味がない。

 だが俺はまさに死にかけた。

 家に母親がいたのは幸いだった。

 すぐに消防署が来て、雪の塊に埋まった俺を救出、そのまま救急車で病院に搬送した。

 気絶してたのは三時間ほど。

 目が覚めた俺を迎えたのは、涙目の毎日迎えに来てくれる幼なじみ……そんなもんはいねえ!

 ……50代既婚の看護婦さんだった。

 世界ってビターね……

 心拍計にエラーが出たのでちょうど見に来てたらしい。

 とりあえず医者がすぐに飛んできて検査をされまくる。

 もう……オムコに行けない……


 結局、俺の外傷は頸椎の捻挫だけ。

 俺が得たのは首に巻かれるマジックテープ式のカラーと、面白くもなんともない怪我の話だけだった。

 だが、異変は確実に起っていた。

 それは嫌そうな顔で見舞いに来てた同じ合気道部の吉村のツラを拝んだときだった。

 吉村は派手系女子だ。

 クセの強い天然パーマをショートカットにした、体育会グループに属するリア充の中のリア充だ。体薄いけど。貧乳だけど。

 同じ合気道部なのに文系扱いの俺とは大違いだ。

 だから俺の見舞いに来たのは顧問や担任の命令だろう。

 面倒見の良い姉御肌のせいか仕事を押しつけられたのだ。


「おら、見舞い」


 そう言って吉村は俺に本を投げ渡す。

 『ドグラマグラ(文庫●版)』

 よし、喧嘩売ってるんだな。

 やんのかこの野郎。

 揉むぞこら! 薄いけど。

 俺がセクハラ……ごほん、ごほん、ではなく、正当な報復に出ようとすると俺の頭の中で何かが繋がった。

 ピコーンという俺にしか聞こえない効果音とともに。


『天使登録完了。はじめまして、私は天使。個人名はありませんがよろしくお願いします。おめでとうございます。あなたは神様のご意思で天使に選ばれました。これからその力を世界のために役立てましょう』


 う、右手が!

 俺の右手がうずく!

 だれか止めてくれ!

 ぐああああああああッ!

 この力を解放したら世界の命運が!

 ダーク……


『中二病でごまかしてもダメです』


 く、俺の邪眼が!

 全てを見通す呪われた邪眼がああああああああああッ!

 く、や、やめろ! この力を解放するなあああああッ!

 世界が、世界が滅んでしまう。

 フレイムオブ……


『だから中二病でごまかすのはやめてください。あなたの精神年齢は中学生としては極めて高いことがわかっています』


 ……く、俺の妄想のくせに!

 じゃあなんだ。

 おっぱい出してくれんのかよ!

 おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい!

 おっぱいが出てくるまで俺はテコでもここを動かないからな!


『実は巨乳より妹好きのくせに。お兄ちゃんって呼ばれたいくせに!』


 てめえコラ。やんのか!

 お前らコラ! おどりゃああああああああ!

 その指摘はクリティカルだった。

 俺の思春期中学生として触られたくない(コア)をピンポイントで突いたのだ。

 って、俺は誰と話してるんだ?

 その時、病室の窓から風が吹きこみ、俺はそれをトリガーとして現実に引き戻された。

 顔から血の気が引いていく。

 吉村が目を丸くして俺を見ていた。


「光太郎……だいじょうぶ? 顔が青いけど」


「な、ナンデモナイヨ」


 まずいまずいまずい!

 頭の中で変なやつと会話なんて!

 脳とか神経のお医者さんに直行コースだ。

 俺はきっと雪に埋まったときに頭を打ったに違いない。


『ちがいますよー。もう、頑固だなあ。もう面倒だから、天使の能力を解放しちゃいますね♪ えい!』


 その時だった。

 俺の目に異変が舞い降りた。

 それは俺が当たり前に見ていた世界を拡張した。

 ARってやつだ。

 それはステータスだった。




 名前  : 吉村春香

 ヨミ  : ヨシムラハルカ

 AGE : 13

 職業  : 中学生

 所属  : 合気道部

 LV  : 32

 HP  : 98

 MP  : 30

 STR : 104

 INT : 75

 DEF : 63

 AGI : 70

 DEX : 120

 LUK : 780



 スキル :


 学力  : LV10

 合気道 : LV5

 物理攻撃: LV20

 物理防御: LV20


 バッドステータス:


 腐れ童貞野郎への淡い恋、貧乳


 備考 :


 腐れ童貞野郎にフォーリンラブ




 ……腐れ童貞野郎って誰だ?

 なあ誰よ!?

 俺は気になって仕方がない。

 ねえ誰よ!

 人のプライバシー覗き放題超楽しい!


「なにジロジロ見てんだよ?」


 俺の不審な動きに吉村が言った。

 額には皺が寄っている。


「あ、ごめん。吉村さん、ちょっと考え事してた」


 あはははー。

 と俺はごまかす。


「そうか……無茶するなよ。首の骨が折れてたかもしれないんだからさ」


 怖いこと言うな。


『心配してるんですよー』


 うっさい。

 童貞特有の猜疑心をなめんなよ!

 俺は心に話しかけてくる『何か』と漫才を繰り広げると、吉村に向けて体裁を整えた。


「吉村さん。今日はありがとう。このまま学校に行けないんじゃないかって怖かったけど、元気が出たよ」


 スマイル。スマイル。営業スマイル。


「お……」


 お?


「うん、悪い、担任に報告してくる」


「う、うん?」


 そう言うと吉村は慌てて出て行ってしまった。

 顔が赤かったけど、おならか?

 我慢するなよー。


『……ほんと、男の子ってバカですね』


 なにその態度。

 まるで俺が悪いみたいじゃないか!


『バーカ! バーカ! バーカ!』


 ひどい! この子ったら口が悪い!

 コウちゃんスねちゃうんだからね!

 俺は自分の中で不毛なやりとりをする。

 本格的に神経科に行くべきだな。うん。

 その後、帰ってきた吉村と少し話をして、その日は病院で眠った。

 次の日、『耳鳴りがする』って遠回しに言ったら三日ほど入院が伸びた。

 頭部のCTやら聴力検査やら目の検査、検査マシマシお薬マシマシだったぜ。

 結局……何も見つからなかった。全て正常、性格以外。

 だから俺は親に自分に起ったこの奇妙な現象を訴えるのをあきらめた。

 ダメだ! 人に話したら破滅する!

 ちなみに担当の医師のバッドステータスは『不倫』だった。

 婦長さんにも同じバッドステータスがあったが、俺はなにも見なかった。

 なにも知らないし、誰にも言わない。

 絶対にツッコミは入れないからな。

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