96
「昨日、私が彼にプレゼントしたものだ。あれをはめていると、我々の言葉が理解できる」
「それは――」
メアリーが目を見開いて俺を凝視した。
「おかしい。確かに、そういう魔道具が存在することは知っているが、あんなデザインではないはずだぞ」
「あれは試作品だよ。いままでのものと違い、我々の言葉が理解できるだけではなく、話すことも可能になっている」
まずいなあ、と思ってる俺のほうをアーバイルがむいた。
「そういえば、さっきから、なぜ黙っているのかね?」
「――まあ、なんて言うか、俺は肌の色が黄色で、あんまりこのへんじゃ見ない、特殊な種類らしいからさ」
もう誤魔化せないと思って、俺は普通に返事をした。たぶん、ものすごく流暢なサーバナイト語だったんだろう。メアリーたちがギョッとなる。
「だから、変に言葉が流暢だと、それはそれで怪しい目で見られると思ってさ。それで、言葉が通じないふりしてる方がやりやすいだろうと思って、ジャスミンたちに頼んで、言葉が通じないふりをして、通訳してもらってたんだ。アーバイルには言ってなかったな。だから、いま思いっきりばれて、すっげー焦ってる」
「あ、そうだったのかね」
アーバイルも、少し驚いたような顔を見せた。
「まあ、安心したまえ。ここにいるメアリーたちは、街エルフで、しかも女性騎士だ。Bがそういう演技をするというのなら、協力もしてくれるだろう」
その街エルフが何をやったのか、俺は知ってるんだよ。このあと、どうなるのかなと思ってたら、メアリーが鋭い目を俺にむけてきた。案の定である。
「貴様、私たちの言葉がわかるのか」
冷えた声で静かに訊いてくる。
「まあ、一応」
もう否定しても仕方がない。俺はうなずいた。残りのダークエルフたちが顔を見合わせる。ヤバいぞ、という表情だった。
「その、わかる言葉というのは、アーバイルたちが話しているサーバナイト語だけか? それ以外の言葉も理解できるのか?」
「さあ。そこまで詳しくは俺も説明を聞いてないから」
これは事実だが、メアリーの疑惑の瞳は変わらなかった。
「ところで昨日はすまなかったな」
疑惑の視線のまま、メアリーが話題を変えた。というか、これが本題である。




