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 食いたいものを頭のなかから追い払って提案した俺に、ジャスミンが妙な顔をした。


「どうして? 暴走したから、プログラミングをチェックしてっていう話は、もうアーバイルにしたのよ? あとは、むこうできちんと修正するって言ってくれたし。私たちは帰ればいいだけじゃない」

「まあ、そうなんだけど」


 どう説明したらいいものだか、俺は頭を巡らせた。


「まあ、とにかくだな。アーバイルの言う、ナイトゴーレムの修正がどれくらいきちんとしてるか、一応、自分たちの目で見ておくべきじゃないかな? と思ってさ。ほら、人間って、寿命がエルフより短いから、口約束だと、平気で破って年とって死ぬかもしれないし」

「――ああ、なるほどね」


 ジャスミンが、とりあえず納得したようにうなずいた。


「そうか。人間は、私たちとは違うし。ちゃんとやってるかどうか確認するのは、いいかもしれないわね」

「そうそう」


 これがジャスミンたちの欠点だな、と相槌を打ちながら俺は思った。エルフは森の貴族で気高いそうだが、そのせいで、一度約束したら、そのまま、永遠の約束として成立してしまうのだろう。それが常識になってしまっているから、人間たちも同じだと無条件に考えている。世のなかには、平然と裏切る奴が存在することを知らないのだ。


「人間の世界では、契約という言葉があってな。それをしない間は、何を言ってもなかったことにできるんだ」


 これはこれで極端かなとも思ったが、とりあえず俺は人間世界の常識を説明しておいた。俺が元いた世界での常識だが。


「だから、人間が何か宣言しても、次の日にはなかったことになると思っておいたほうがいい。下手すると一呼吸で意見を変える奴もいるから」

「ふうん」

「Bは、そんな人間ばかりの世界で、どうやって生きてきたの? 嘘を吐く人間を相手に、騙されてばっかりだったの?」


 これはローズの質問だった。笑顔でローズを見下ろす。


「話半分に聞くって言葉があってな。とりあえず、ふむふむってうなずいて、話の半分くらいは信用しないことにしてたんだよ」

「それって、相手に失礼じゃないの?」

「相手も同じことしてた。お互い様さ」

「ちょっといい?」


 これはジャスミンだった。

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