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俺が切りだしたら、たちまちのうちにジャスミンの表情が不機嫌になった。話題にだしただけで、である。このレベルで対立してるのか。
「あいつらが何?」
「まあ、そう喧嘩腰になるな。俺はあいつらの肩を持とうとか、そう言うことを考えて話してるんじゃない。――あいつらも、やっぱり、自分たち独自の言葉を使うんだよな?」
「知らないわよそんなの。知りたくもないし」
騎士寮で、ダークエルフたちが平然と話していたから、一応の確認をしてみたのだが、ジャスミンの返事は少し予想外だった。
「あいつらのことを知りたかったら、あいつらに訊けばいいんじゃない? というか、Bってあいつらと会ったの?」
「俺だけ騎士寮に残って、ちょっと、用を足してただろ。そのときに、見まわりから戻ってきた、とかなんとか言って、やってきた。5人くらいいたかな」
ここまでは正直にしゃべってもいいだろうと思って説明したら、ジャスミンが急に心配そうな顔をした。
「それ、たぶん私が見かけた連中よ。大丈夫だった? B、あいつらに、何かされたんじゃないの?」
「あ、いや、そういうのはなかった。俺が、言葉が通じないと思って、目の前で、いろいろ話してたけど」
こりゃ、よっぽどの偏見があるんだな、と俺は思った。会っただけで被害を被ったと思いこむとはな。ダークエルフのことを犯罪者か何かと思っているらしい。
まあ、俺たちの世界でも、似たようなことは散々あったそうだから、仕方のないことかもしれないが。
「それで、話題を変えるけど。ちょっと頼みがあるんだ」
歩きながら話していたら宿についてしまったので、受け付けで手続きを済ませたジャスミンに俺は申しでた。ジャスミンが不思議そうにする。
「今度は何? 私たちにも、日本のうどんを食べろっていうの?」
「あ、そういうのは、べつに。――待てよ。それはそれでおもしろそうだな」
故郷の味が一番、というのは、どこの誰でも同じだろうが、たまには諸外国の料理を味わって、舌鼓を打つのも悪くないはずだ。俺だって、元の世界ではハンバーガーやラーメンやパスタを普通に食べてたし。――いかん、うどんだけじゃなくて、ハンバーガーも食いたくなってきた。
「まあ、食事は、興味があったら試してみてくれ。ただ、俺の頼みっていうのはべつでな。実は、明日、この宿をでて、ジャスミンたちの村まで帰る前に、もう一度、ナイトゴーレムの製造工場へ行きたいんだ」




