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なるべく優しい口調で俺はジャスミンに言った。
「また、ここで日本食のうどんを食べたいし」
「――うーん」
少し考えるようなそぶりを見せてから、ジャスミンがうなずいた。
「そうね。まあ、顔を合わせなければいいんだし。黒い連中のせいで、私の予定が変わるのも、なんだか負けたみたいでおもしろくないしね」
考えなおしてくれたのはありがたかったが、理由が意地の張り合いだとは。俺は苦笑した。
「そういうのって、勝ち負けの問題じゃないだろう?」
「何を言ってるの。勝ち負けの問題でしょ?」
平然とジャスミンが言ってくる。それもそうかな、と俺も思い返した。
「じゃ、宿に戻ろう。――ところで、聞きたいことがあるんだけど」
ジャスミンたちと歩きながら、俺は質問してみた。ローズの手をひいて歩くジャスミンが顔をあげる。
「何?」
「いま、ジャスミンがしゃべっているのって、サーバナイト語か?」
「――えーとね」
ジャスミンが、少し空を見上げた。
「サーバナイト語って名前じゃないんだけど、そんな感じ。この町のみんながしゃべっている言葉を話してるわ。そうしないと通じないから」
「なるほど。ま、そりゃそうだろうな。じゃ、森の、自分たちの村にいたときは、違う言葉を話していたわけか?」
「もちろん」
今度は即答だった。
「いまのBにはどっちも理解できるかもだけど、違う言葉だったわ。こっちの人間が聞いても、理解できないって顔をするでしょうね」
「ふむ、つまりエルフ語ってわけか」
「そういう名前では呼んでないけどね。簡単に言ったら、そういうこと」
「それで、ジャスミンは日本語も話せるわけか。すごいな」
「そりゃ、勉強したもの」
俺の賞賛に、ジャスミンが嬉しそうにした。あらためて思ったが、俺はここにきた時点で、相当にラッキーだったらしい。言葉は通じるし、通訳もしてくれる。ジャスミンやマーガレットがいなかったら、自殺してこっちにきて、そこで、もう一度、今度は野垂れ死にしていただろう。
「で、あのな。さっき、ジャスミンが言っていた、黒い連中なんだけど」




