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「モビルスーツ?」


 いや、これは、外から人間が操縦するラジコンだな。鉄人28号タイプか。なかに人はいなさそうである。大体、こんなサイズの甲冑を着れる体格の人間なんて、いるはずが――待て待て。ここは異世界だ。確か、サーバナイトだったか。巨人族が鎧を着込んでいる可能性も否定できない。考えてる俺の前で、三メートルもある青い甲冑がギクシャクとこっちをむいた。まるでロボットダンスである。前言撤回だな。あれは人間の動きじゃない。


「ひ――」


 さっきの幼いエルフの声に気づき、俺は顔を下ろした。三メートル――正式な名前なんか知らないし、面倒くさいから、とりあえずそう呼ぶ――の足元に、あの子供エルフがいた。地面に座りこんでいる。いや、ヘタリこんでいるのか。少なくとも、仲のいい友達とふざけっ子をしている感じではなかった。


「○○○○!」


 背後から、べつの声が聞こえてきた。振りむく余裕なんてないから想像だが、おそらく、この村の大人たちが悲鳴を聞いて駆けつけてきたんだろう。村の連中が集まってくるというのに、三メートルが気にしたふうもなく、子供エルフに手を伸ばした。野郎、何する気だ!?


「やめろ! 怖がってるじゃねえか!!」


 とにかく俺は三メートルに走り寄った。深夜のTVでやっていたプロレスの真似でドロップキックを放つ。もちろん獣化を意識しながらだ。相手は三メートルのロボットである。俺の正体を知られたらどうなるのか? そんなことはあとで考えるしかない。いまは子供エルフと自分の身を守るのが先だ。

 俺の蹴りを食らい、除夜の鐘みたいな音を立てて、三メートルがグラッとバランスを崩した。


「大丈夫だったか!?」


 俺は三メートルから背をむけ、子供エルフに駆け寄った。唖然とする子供エルフを両手で抱き起こす。その、俺の両腕を覆う獣毛。俺だって目を背けたくなるような。こんな、おぞましい。――何を考えてるんだ自分。それどころじゃないだろうが。

 俺は子供エルフを抱き上げたまま、一気に10メートルほど駆けた。いったん、立ち止まって子供エルフを地面に下ろす。


「いいか、早く逃げろ」


 俺の言いたいことが子供エルフに通じたかどうかはわからない。まあ、通じなくても問題ないだろう。化物とロボットの喧嘩なんて目にしたら、普通は誰だって逃げだす。

 俺は三メートルの方にむきなおった。バランスを崩した三メートルは片膝をついていたが、それでもダメージを受けたようには見えなかった。実際、俺の見ている前で、三メートルは普通に立ち上がってのけた。


「起動不能に追い込むには、コンピュータ部分をぶっ壊すしかないようだな」

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