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言いにくくて照れ笑いを浮かべる俺を見て、ジャスミンが眉をひそめた。
「まさか、レイリアに、何か特別な話をして、誤解を解いて仲直りしようなんて言うんじゃないでしょうね?」
「あ、いや、べつにそういうことじゃなくて――」
否定しかけて、俺は妙に思った。
「俺がレイリアと話をするのが嫌なのか?」
「え!」
眉をひそめて不機嫌そうな顔をしてるから質問したんだが、なんでかレイリアが慌てたような表情になった。なんとなく、赤面している感じである。
「あの、Bがレイリアと話をするのが嫌なわけじゃなくて。なんて言ったらいいのか、ほら、レイリアって、Bが獣人類だってことで、信用できないって感じで見てたし。そのBがレイリアに会いに行ったら、なんかまずいんじゃないかって思って」
その場で考えた言い訳みたいなのを、しどろもどろって感じで言ってくる。
「にらみつけてきたのは勘違いだって言ってたんじゃなかったか?」
レイリアの通訳をそのまま繰り返したら、ジャスミンが赤い顔のままうつむいてしまった。
「そ、それでも、ひとりで行っちゃったレイリアと、男のBがふたりきりになったらおかしいじゃない。変な噂が立つかもしれないし」
「――ああ。ま、それはあるかもな」
むしろ、いまのレイリアに話しかけるのは逆効果な気もするし。納得する俺のことをジャスミンが上目遣いに見た。
「ジャスミン、○○○○」
これはローズの言葉だった。輪っかを外してる状態だったから言ってる意味はわからない。とりあえず、ジャスミンを見あげるローズが笑顔だったことは言っておこう。そのローズの言葉を聞いたジャスミンが、なんでか真っ赤になる。
「○○○○!」
ジャスミンの言葉に、ローズがぴょんと後ずさった。笑顔のままである。なんだかわからないけど、ローズが何か、気の利いた言葉で一本とったらしい。ジャスミンが、おてんば娘をしかりつける母親みたいな顔でローズをにらみつける。エルフでもこういう表情をするんだな。黙ってればギリシャ彫刻みたいな美貌なのに。これは新しい発見だった。
「それで、あの、俺の話なんだけど」
輪っかを外した状態でジャスミンに話しかけたら、慌てたようにジャスミンが俺のほうを見た。正確には、俺の頭をだ。俺が指で輪っかを外しているのを確認し、安堵した表情になる。
「いま、ローズがなんて言ったか、ここで言える?」
「言えるわけないだろう。わからないんだから」




