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「待ちなさい、レイリア」
「姉上はそれでいいのか!? お爺様を愚弄されたのだぞ!!」
お爺様? 不思議に思って聞いていたら、ミーリアが困ったような照れ笑いを浮かべて俺たちを見た。
「レイリアがすまない。実は、ナイトゴーレムは、私たちの祖父が基本設計したものなんだ」
へえ。あのアーバイルがミーリアとレイリアの祖父だったのかな、と思っていたら
「もう祖父は旅立ったんだが、そのときの基本設計をもとに、あなた方が会った、あの技術者アーバイルが大量生産化したんだよ」
ちょっと想像と違う返事がきた。なるほど。直接の祖父ではなく、アーバイルは後継者だったわけか。納得しながら紅茶を飲む俺から目を逸らし、レイリアがジャスミンのほうをむく。俺は言葉が通じないから言っても無駄だという判断からだろう。
「祖父は魔導士のなかでも特級の能力を持っていた! だからナイトゴーレムの製造を命じられ、名誉騎士の称号までいただいたのだ!! その祖父の設計したナイトゴーレムに欠陥などあるはずがない!!」
「人間である以上、誰にでも過ちはある。私たちの祖父にもだ。それは認めなくてはならない事実だから」
なだめるようにミーリアが言う。姉妹でも、考え方は全く同じではないらしい。俺はティーカップを口に当てながら、こっそりとふたりを観察した。
姉ミーリアは祖父を尊敬しているが、完璧と判断しているわけではない。レイリアは――おそらく祖父と会った記憶がないのだろう。だから心のなかで神格化している。
その祖父のミスなど、何があっても認めるわけにはいかない――そんなところか。
「ジャスミン」
怒りと言ったらいいのか悲しみと言ったらいいのか、とにかくストレスのたまりまくった形相でレイリアがジャスミンをにらみつけた。
「はっきり言うが、いまの言葉は非常に不愉快だった。すまないが、これで失礼する。Bへの通訳はよろしく頼んだからな」
言って背をむけてすたすたと歩いて、大広間のお茶会から退室してしまった。――これ、俺が追いかけるのもおかしいよな。そもそも、俺は言葉が通じてないから訳がわかりませんって顔をしなくちゃならないし。
とりあえず、演技的にも真実的にも困った状態の俺のほうをジャスミンがむいた。
「ナイトゴーレムを設計したのは、ミーリアとレイリアのお爺様だったみたい。それで、お爺様の設計にミスはないはずだって言って、怒ってレイリアはでていっちゃったわ」
非常にシンプルで要点をまとめた説明がくる。俺は眉をひそめて頭を抑えた。苦悩しているというパフォーマンスをしながら、こっそり頭の輪っかをずらす。




