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「ああ、あるな。ドラゴンを駆逐するために製造されたものだ。AIで自動で動く。いま、各地に派遣されているはずだが」


 ミーリアの説明は、俺がエルフ村でマーガレットから聞かされたものと同じだった。ここまでの認識はお互いで間違ってないらしい。余計な言葉がでないように、俺は紅茶を何度も口に運んだ。口がふさがってればしゃべることもないからな。


 あらためてジャスミンが口を開いた。


「そのナイトゴーレムなんですけれど、これが実は、予想外の暴走をするんです」

「――なんだと?」


 ジャスミンの説明に、ミーリアと、さらには横に座っているレイリアも眉をひそめた。いやいや気にしない、ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。自分で自分に言い聞かせながら、俺はひたすら紅茶を飲むことに決めこんだ。


「ナイトゴーレムが各地に派遣されたという話は私も聞いていました。それから、魔力で動くので、魔力が切れかかったら、たおしたドラゴンから魔力を吸収するとも。それも自動でそう行動するようにプログラミングされていると」

「そのはずだ」


 ジャスミンの説明に、ミーリアもレイリアもうなずいた。それになんの問題があるのか? という顔である。


「ところがですね。私の住んでいる村の近くに派遣されたナイトゴーレムがおかしくなって。ドラゴンじゃなくて、私たちの魔力を吸収しようとしたんです」


 この言葉を聞いた瞬間、ミーリアとレイリアの表情が激変した。これが普通じゃないレベルである。驚愕と言ったらいいのか、自信に満ちた傑作が、実は欠陥品だったと知ったときの表情と言うか――そうだな。俺のいた世界でたとえるなら


「今度の原子力発電所は絶対安全です」


 と、胸を張って記者会見で言っていたのに


「いまさっき、放射能が漏れて臨界事故も起こって大変なことになっているって情報がきました。どなたが責任を?」


 こういう質問をされたときの関係者の顔――そんな感じだった。


「それは本当か?」


 ミーリアの質問は少ししてから聞こえた。


「本当です。ここにいるローズが、襲われかけました」


 ジャスミンの説明に、砂糖だぶだぶの紅茶を飲んでいたローズがこくんと頭を縦に振った。


「すごく怖かった。あのとき、村のみんなは畑仕事にでていて、誰もいなかったから」

「そんな。ちょっと待ってほしい」


 これはミーリアではなく、隣にいたレイリアだった。

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