71
「だから、森に住むという、昔からの伝統を重んじてきたエルフが珍しくてな。そのようなエルフが、何の用があって町にきたのか、できれば理由を知りたいんだ。もちろん、言いたくなければ、秘密にしてくれてもかまわないのだが」
「あ、そういえば、説明してませんでしたね」
「まあ、とりあえずこっちへ。立ち話もなんだ」
ミーリアが言い、ジャスミンをテーブルのある所へ招いて行った。当然ながら、俺とローズもついていくことになる。
「あの小さい娘もエルフなのよね」
「かわいらしい。姉妹なのかしら」
「私はローズと言います。ジャスミンとは親戚です」
ほかの女騎士――だと思う。いまはみんな私服で甲冑を着ていないから断定できない――の言葉に、俺の横を歩くローズが返事をした。なんとなく誇らしげである。かわいいと言われたのが嬉しいらしい。やはり10歳でも女の子なんだな、と俺は感心した。
「まずはお茶でも」
ジャスミンたちと一緒に椅子に座ると、メイドがお茶を持ってきた。イギリスのお茶会って、こんな感じなのかもしれない。とりあえず黙って見ていたら目の前にお茶がきたので、俺は飲むことにした。俺の向かいに座ったレイリアが少し不思議そうにする。
「Bは砂糖を入れないのかな」
《俺はいらないから》
と、あぶなく返事をするところだった。口のなかに紅茶が入っててしゃべれなくてホッとしたぜ。ティータイムだからってリラックスは禁物らしい。とりあえず無表情に徹しながら俺はティーカップを口から離した。ジャスミンを見る。
「砂糖は必要か、だって」
俺は手を左右に振った。ジャスミンがうなずいてミーリアのほうをむく。
「このままでいいそうです」
「そうか。やはり男というのは甘いものを好まんのだな」
俺の横では、ローズが紅茶に砂糖をザラザラ入れていた。こっちはこっちで極端だな。やはり10歳でも女の子なんだろう。
ほかの女性たちもクッキーみたいなのをつまみながらお茶を飲みだす。あちこちで雑談みたいなのがはじまった。今日はオフらしい。
「それで、ここにきた理由なんですけど」
ジャスミンも紅茶を飲み、正面に座っているミーリアに事情を説明しはじめた。ミーリアもうなずいてジャスミンを見る。
「実は、ここでつくられた、ナイトゴーレムという兵器がありますよね?」




