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「○○○○!」


 そのまま、俺には理解不能な言葉を叫び、幼いエルフが背中をむけて走り去っていった。ああいう反応は、どこの種族にされても凹む。


「――でも、まあ、怯えられて当然か」


 少し考え、俺は仕方がないと判断した。エルフが排他的なことくらいは、ここにくる前から俺だって知っている。だからハーフエルフは差別されるんだし。俺みたいな、どこの出身かもわからない人間を目にしたら、怪しい奴と思われて当然だろう。ジャスミンは平気な顔で接してきたが、あれは母親が前例を知っているから特殊だったと考えるしかない。


「というか、下手したら、人間を見るのもはじめてって可能性もあるしな」


 俺は日本人だ。エルフからしたら、髪が黒くて肌が黄色い、異常な外見の種族と見られても仕方がない。この村のエルフたちは前例のAを知っていたからよかったが、べつの村だったら俺は見殺しにされていたかもしれなかった。獣化症にかかって獣人類なんて呼ばれて、自殺しようとしたら、これか。運がいいんだか悪いんだか。


「村で生きていてもいいが、労働力として、無償で農作業とかのパターンかな」


 俺は、これから、この村でこき使われる。――そんな展開が頭をよぎった。ま、いいか。元の世界で奇異の目で見られてストレスがたまる生活に比べれば、まだましだ。何しろ、エルフから見れば、俺は本当に異種族である。奇異の目で見られても、それは不当な差別ではなくて妥当な差別だった。

 半分ほどふてくされた気分で、そんなことを考えていたときだった。


「○○○○!」


 また、あの幼いエルフの声がした。悲鳴みたいに甲高い。また戻ってきたのかな、と思いながら、俺は窓のほうをむいた。緑豊かな、イギリス貴族の豪華な庭みたいな光景が見えるだけである。――少しして、いまのエルフの声が、遠くから聞こえた、本当の悲鳴なんだと俺は気がついた。直後に、ごうん! という、およそ、この世界からは聞こえるはずのない、産業革命以降の機械みたいな振動が地面を揺らす。


「なんだ?」


 訳がわからないまま、俺は窓から飛びだしていた。地震だったら、外にでるのが基本だ。地震じゃなかったら――まあ、そのときはそのときである。避難所の場所なんか把握してるわけもないから、とりあえず俺は悲鳴の聞こえたほうへ駆けてみた。木製のバンガローみたいな家々の間を走り、俺がでたのは、たぶん大広間だったと思う。

 そこに、エルフの生存する世界には、およそ場違いなものが立っていた。


「なんだあれ?」


 体長は、大体三メートルくらいだろうか。色彩は、青を基調に、ところどころ、金とか銀で荘重されている。西洋の甲冑ではない。まさか、そんな。これは――

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