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アーバイルがジャスミンに謝罪した。ジャスミンがふてくされたような顔をする。
「ドラゴンに対抗できる超兵器をつくったって言うから喜んでいたら、とんでもないことになったって、ママが何度も言ってたわよ」
「重ねて申し訳ない」
アーバイルは本当に反省しているようだった。何しろ、ナイトゴーレムがジャスミンたちの村に侵入してきたという動かぬ証拠がある。あるはずのない事態が起こったと認めるしかなかったんだろう。
「早速、各地に派遣させたナイトゴーレムには帰還するように命令をだしておいた。一度に1000体ものナイトゴーレムのプログラムを書き換えるのは無理だから、少しずつ帰還させ、修理して、あらためて少しずつ派遣させるという作業の繰り返しになるが」
「なるべく早くお願いね。100年以上は待てないから」
「10年でなんとかしよう」
「あら、そんな急スピードでできるの?」
「忘れてはいないかね? 我々の寿命は、君たちとは比べ物にならないほど短いんだ」
最後は、少し寂しそうに言うアーバイルだった。だからこそ、短い人背を謳歌したい。そのためには、人類の敵であるドラゴンに対抗できる兵器をつくらなければ。――たぶん、そんな理由でアーバイルはナイトゴーレムの制作に着手したんだろう。
それが欠陥品だった。これは、アーバイルにとっても衝撃的な事実だったに違いない。
「あの、話はこれで終わりでいいのかな?」
とりあえず、俺は口をはさんでみた。アーバイルとジャスミンがこっちをむく。
「私はそのつもりだが」
「私は、ママに言われたことはちゃんとやったし、私たちの村にナイトゴーレムがきたっていう証拠も見せたわ。あとは、アーバイルの言葉を信じて、村へ帰るだけ。特にすることはないわね」
「そうか。じゃ、俺は、ちょっと地上へあがって、町を見てまわるとか、そういうことをしてもいいわけだな? もう言葉もわかるし」
確認したら、ジャスミンが納得したような表情になった。
「そうか。Bは、いままで、まともに会話ができなかったからね。じゃ、お昼まで、城下町を見物しましょうか」
「おう」
「B、これからは普通にお話しできるんだね」
これはローズの言葉だった。俺が顔をむけると、なんだか嬉しそうに俺を見あげている。
「私ね、Bがナイトゴーレムをやっつけて、すごく格好良かったのに、言葉がわからなくて、それが悔しかったんだよ。ジャスミンの通訳がないと、なんにも話せなかったから」




