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言われて気づいた。俺は、ジャスミンたちそっちのけで、ものすごい勢いで卵かけご飯をかっこんでいたらしい。
「ごめん」
「べつにいいわよ。好きなものを夢中になって食べていたんだから。人間の貴族は食べながらおしゃべりをするっていうけど、そんな余裕もないほど、喜んで食べていたのは想像がつくし」
言って、ジャスミンが少しだけ声を潜めた。
「エレガントじゃなかったけど」
「――次から気をつける」
俺が下品な行動をとったら、日本人が下品だと思われるのだ。そういう意味ではプレッシャーが高いな。これからは責任重大である。
「そういえば、夕飯にお茶漬けってできるかな」
なんとなくつぶやいたら、あらためてマッシュポットを食べていたジャスミンが顔をあげた。
「それ何?」
さすがにジャスミンも知らなかったらしい。
「火を通した米の飯にお茶をかけて食べるんだ」
説明したら、ジャスミンが拍子抜けしたみたいな顔をした。
「簡単な料理じゃない。注文すればつくってくれるわよ」
「それもそうか」
紅茶のお茶漬けになりそうだが。砂糖とレモンとミルクはいらないって言っておかないとな。しばらくしてジャスミンとローズも朝食を終え、俺たちは宿をでることにした。
「○○○○」
馬車に乗ったら、ローズがジャスミンに話しかけた。ジャスミンが返事をするというやりとりを少しやって、ローズがうなずく。
「いま何を話してたんだ?」
「これから魔法庁へ行くのかって訊いてきたから、そのとおりよって返事をしたのよ。そうしたら、町のなかを見たいって言うから、それはあとだって」
「ふうん」
そういえば、レイリアと会う約束をしたとき、もうローズは寝ていたな。そのへんのことは、あとでジャスミンに説明してもらうか。
魔法庁へは、特に何も問題なく到着した。ジャスミンが手綱をひいて馬をとまらせる。同時に、魔法庁の入口から衛兵みたいなのがでてきた。
「○○○○」
馬車の奥からのぞいていたら、衛兵とジャスミンが少し会話して――どういう説得をしたのかは不明だが、衛兵がすぐに横へ移動した。そのとき、ちらっと俺と目が合う。




