48
俺はただ、自分でひっくり返したテーブルを元に戻そうと思っただけである。身体を屈め、テーブルに手をかける。ひょいと向きを変え、俺はそのテーブルを元の場所まで持って行った。静かに置いて顔をあげると、周囲の男たちがひそひそと話をしている。べつに聞こえるようにしゃべったって、俺にはわからないんだが。
「ちびまる子ちゃん」
「おう」
俺は笑って手を振って見せた。それを見た男たちが、なんだかいろいろ言いだす。
「どうして日本人なのに、俺たちを殴ったんだって言ってるわ」
ジャスミンが通訳してきた。
「日本人は殴られても文句を言わないはずだって」
なんだか聞き流せない話だった。
「待て。なんだそれ。あいつら、俺以外の日本人を殴ったことがあるのか?」
「聞いてみるから。○○○○!」
「○○○○」
「本当に殴ったことはないみたい。ただ、そういうふうに聞いてるから、驚いたんだって」
「そうか。じゃ、説明してやってくれ。俺は、おまえたちが女性を殴ったから、頭にきて、助けようと思って、それで、ああいうことをやってしまったんだ」
「○○○○」
ジャスミンが通訳し、それを聞いていた男たちが納得の顔をするより早く、そばに立っていたレイリアがこっちを見た。
歓喜の表情だった。
「○○○○!」
何やら言いながら俺の手をとる。なんだと思ったら握手だった。西洋のあいさつの流儀だな。こっちの世界でも基本はそうらしい。
「おまえは素晴らしいって言ってるわ」
ジャスミンが通訳してきた。なんだか照れる。――というか、ここは肌の色だけじゃなくて、男尊女卑の思想まで残ってるみたいだな。照れ笑いの下で、俺はこの世界の価値観にどう抗おうかと考えていた。それとはべつに、お構いなしな調子でレイリアが話しかけてくる。
「○○○○!」
「できるなら、我が隊の皆にも、おまえを会わせてやりたい、だって」
「そうか。べつに断る理由も――いや」
俺は、どうして都にきたのか、その理由を思いだした。ジャスミンのほうをむく。
「一応の確認をするけど、その申し出は本気なのかどうか訊いてくれ」
「○○○○」




