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「女の騎士もいるのか? まあ、平等と言ったら平等だけど。というか、そんな人がなんで町の酒場にいるんだよ? 騎士って偉いんだろ?」
はじめて見たときから、なんとなく服装も上品だな、ほかのみんなとは違うな、とは思っていたが、町の住民ではなく、それを支配する側の人間だったとは。驚く俺にジャスミンが説明をつづける。
「町の平和を守るために、ときどき庶民のふりをして、あちこち歩きまわってるんですって。それで、今夜は女性に対する不当な暴力と、明らかに殺人と思われる喧嘩を目にした。おまえたち、縛り首になりたいか? だって」
「あ、それでみんな膝をついてるのか」
誰だって命は惜しいからな。許しを請う男たちをレイリアがにらみつける。
「○○○○!」
「ここにいる日本人は、私の友だ。非礼は許さんぞって言ってるわ」
「へえ」
つか、その日本人って、俺のことだと思うが。友とは嬉しいことを言ってくれる。考えてる俺の横でジャスミンが不思議そうな顔をした。
「B、何をしたの?」
「見てただろ。レイリアが男に殴りかかって、このままじゃヤバいと思ったから、助けに入った。それだけだ」
「ふうん。――そういうの、共闘って言うのかしら」
「共闘って言うより戦友だな」
言ってから自分で納得した。戦友か。なら、確かに、一緒に戦った友である。
「○○○○」
レイリアが俺のほうをむいて、あらためて何か言ってきた。
「いま、Bは自分の友だと言っておいた。この宿で、肌の色による差別は一切ないから安心してほしい、だって」
『アリガトウ』
とりあえずサーバナイト語で礼を言ってから、俺はまずいかなと思った。こういう宣言がある以上、普段、俺は偏見の目で見られるってことだ。やることやったら、さっさとジャスミンの村に戻って、人目を忍んで暮らすべきかもしれない。考えてる俺のことを、レイリアが興味深そうに見た。
「○○カラテ○○」
「それにしても、すごい力だな。大の男を投げ飛ばして、しかも樫の木のテーブルも投げ飛ばして。何か格闘技でもやってたのか? 空手か? って訊いてるわ」
「空手は殴るもんだ。投げるのは柔道だよ。まあ、俺のはどっちも真似事だけどな」




